PROFILEルーベン・ドレッセルハウス|Rouven Dresselhaus
Cavalry Ventures創設者、マネージングパートナー
専門知識を有し、企業成長を支える資金調達に加え、投資戦略や事業ポートフォリオ管理といった戦略的な意思決定に携わる。Cavalryでは、McMaklerやFreightHubといった企業の事業ポートフォリオに責任を持つ。

2014年、ベルリンで生まれたスタートアップ「Rocket Internet」が欧州最高額で上場した。以来ベルリンは欧州スタートアップのハブとして若きクリエイターを惹きつけている。Startup Genomeの「2017 Global Startup Ecosystem Ranking」によると、ベルリンのスタートアップエコシステムは世界で7位、欧州ではロンドンに続き2位にランクインしている。

そんなベルリンでアーリーステージのスタートアップを支援してきたのが「Cavalry Ventures」だ。2016年よりおよそ70社以上に投資、9件のエグジットと1件のIPOを果たし、100億ドル以上の時価総額を生み出した

魅力的なベルリンのスタートアップエコシステはどのように発達したのか、そして彼らの目に“TOKYO”はどのように映るのか。「Cavalry Ventures」のRouven Dresselhaus氏に伺った。


ベルリンは毎年500社以上のスタートアップが生まれていると聞きます。いつ頃どのようにしてベルリンはスタートアップのハブとして成長していったのでしょうか?
1990年代後半からスタートアップが生まれつつありましたが、エコシステムが一気に成熟したのは、ここ10年くらいでしょう。そのきっかけとなったのは、フードデリバリーの「Delivery Hero」やEコマース事業の「Zalando」など、時価総額が数十億ドルを超える企業の登場です。

早期に成功した彼らが、今では知識の提供やVCの紹介など、若い世代に対する支援を行っています。ベルリンがスタートアップのハブとして継続的に繁栄できている背景には、そうした起業家の互助関係があるんです。
ベルリンやドイツのスタートアップをめぐる環境はどのような点が特徴的なのでしょうか?
ベルリンの自由でオープンな文化は、間違いなくクリエイターを惹きつけてきました。ロックミュージシャンのデヴィッド・ボウイやイギーポップは、1970年代にベルリンで暮らし、最も優れた作品を発表しました。それもきっとベルリンの持つ空気と無関係ではないでしょう。そのDNAは未だに息づいている。

ドイツ全体でも古くから起業家精神が強く根付いています。自動車など昔からの産業と、ITのような新しい産業の両方が密に交流をしている点も、ベルリンにとって有利に働いたでしょうね。今後もブロックチェーン技術など最先端の分野において、ベルリンが成長していくことを期待しています。
「Cavalry Ventures」ではどのような仕事を担当されているのでしょうか?
出資予定の企業や出資しているパートナーとのやりとりが中心ですね。私たちは支援する起業家の基準として、「大胆で冒険的なアイディアを形にしようしているか」という点を設けています。勇敢な起業家たちと暮らしているので、決して昨日と同じ1日はない。変化に富んだ日々を過ごしています。社内ではみんなでNintendoのゲームで遊ぶこともありますよ。
スタートアップを支えるには出資を行うだけでなく、エコシステムを育てることが欠かせないと思います。そうした点に「Cavalry Ventures」はどのように支援していますか?
過去に成功を収めた起業家たちとの関係性を重視しています。なぜならスタートアップエコシステムはサイクルのようなものであり、過去に成功した起業家が次世代に知識を共有しないと成熟し得ないからです。

何より大切にしているの、私たち自身が起業家であろうとすること。泥臭い仕事も好んで取り組みます。

日本のスタートアップのエコシステムについてはどう感じられますか?
発展途上ですが高いポテンシャルを秘めているという印象です。スタートアップのエコシステムの成熟は、イグジットに成功する企業の増加と比例すると考えています。多くの人が忘れがちですが、シリコンバレーが今の状態になるまでには、40年以上かかっている。今は各都市がその成功した手法を踏襲しつつ、新たなエコシステムのあり方を探っている途中だと理解しています。
なかでも特にポテンシャルが高いと感じる分野はありますか?
1つはブロックチェーンですね。日本は早い段階からブロックチェーンが盛り上がっていますし、支援する制度も整っている印象を受けます。2つ目はロボティクス。日本は工業領域において優秀な研究者や企業インフラなどが揃っている。その強みを駆使して、ロボティクス領域のイノベーションを牽引してほしいです。
“発展途上”な日本のエコシステムを、より強固にしていくためには、何が必要なのでしょうか?
繰り返しになりますが、経験ある起業家たちがエコシステムを支えようという意識を共有し、支援を行うことが大切だと思います。そうした文化を日本でも育んでいく必要があるでしょう。例えばCavalry Venturesには過去に成功した起業家が数多く所属し、次世代のスタートアップを支援しています。

X-HUB TOKYOのように金銭だけではなく、しっかりと知識やノウハウが循環していくエコシステムの整備が、今の日本に求められているのではないでしょうか。