中国は今、AIやビッグデータ等の最新のテクノロジー開発を中心に、世界のトレンドを作りつつある。そんな中国最大手テクノロジー企業の一角を占めるTencentの方々をお招きし、世界最先端のデジタル化社会である中国市場の現状やビジネス環境、Tencentという会社の変遷、今後の展望、最新テクノロジーを駆使したサービス等についてご講演いただいた。


デジタル化の中国市場現状

〈講演者〉
Tencent Cloud
シニアソリューション アーキテクト
周 建川氏

中国では多くのインターネット企業が成長してきました。特にECやデリバリー、金融など個人向けの分野は急速に発展し様々なライフスタイルが生み出されています。

インターネットの発展において、デジタル化された生活はどのようなものなのかをTencentの本社がある深センでの1日を例に簡単に紹介いたします。

朝、電車通勤の方は改札でQRコードを提示します。必要応じて、アプリを使ってタクシーを呼ぶ事もできます。車で通勤する場合は、Mapアプリをナビとして使ったり、近い場合はQRコードを使って自転車シェアサービスで自転車を借りることもできます。通勤中には、最新のニュースや友達の近況をチェックしたり、本や雑誌を読んだりすることもできます。

仕事中はチャットやテレビ会議、ドキュメントファイルを共有して複数人で編集してファイルやデータを保存することがきます。外食の際はアプリを使って、どこにおいしいレストランがあるか調べることができ、支払いに顔認証を使えば財布やスマートフォンもいりません。

ショッピングをしたいときは、様々な中国のECアプリがあり、発送する側でもほとんどの荷物をロボットが自動的に振り分けています。

出張時のチケットやホテルの予約、高速鉄道や飛行機の手配からチェックインまでスマートフォンで済ませることができます。

このようにインターネットの発展によって人々の生活は変わってきました。

最近はインターネットプラスという概念が提唱され、インターネットが様々な産業分野をつなぎ、最終的にインダストリーインターネットという形になると想定しています。 例えば、農業から工業、製造からサービス、生産から消費までといったチェーンです。

今後インダストリーインターネットは、人と物、物と物、物と実際の業務シナリオ、企業と企業のつながりをより重視するようになります。

インダストリーインターネットは新しい言葉ですが、実際には既存の分野である商売、工業、医療、交通、教育、政務、金融、旅行等に活用していけると思っています。Tencentはクラウドの力と今までの発展の経験を基に、中国のインダストリー分野で力を提供したいと考えています。


中国大手IT企業ー
Tencent(騰訊)のご紹介

〈講演者〉
Tencent Cloud
シニアソリューション アーキテクト
裘 彬濱氏

Tencentは1998年の11月に設立された会社で、本社は中国のシリコンバレーと呼ばれている深センにあります。

Tencentのコア事業についてご紹介いたします。

ひとつ目はWeChatです。すでにソーシャルアプリではなくプラットフォームになっており、WeChatのミニプログラム( アプリ上で動くさまざまな細かいプログラム)上で皆さんの会社のサービスを利用することか可能です。WeChatユーザーは、アプリのインストールが必要なくQRコードをスキャンするだけでそのサービスを利用できます。WeChatの月間アクティブユーザー数は11億人を超え、ほとんどの中国人が使っています。

次にQQです。ターゲットの一部はWeChatと重なっているところもありますが、2000年以降に生まれた中国の学生など若者向けのサービスを展開しています。たとえばSNSやゲーム、ライブ配信といったサービスです。月間アクティブユーザー数は約8億人ほどです。

次にゲーム事業です。Tencent Gamesというプラットフォームやeスポーツ等を展開しています。

次に、Tencent Cloudについてですが、中国のto C事業で培ってきたテクノロジーを最終的にはTencent Cloudを経由してto Bに展開していきます。IoTやAI、5Gも中国ではすでに実用化されているのでセキュリティー等、Tencentが持っている技術力やノウハウはサービスやプロダクトとして、様々な分野で活用されています。

最後に投資についてです。ECサイトやデリバリー系やライブ配信などTencentのエコシステムを広げるという観点で企業に投資を行っています。

日本に参入してまだ1年ですが、日本の方にもTencentが持っている能力を少しずつ認めていただいているところです。進行中のプロジェクトも公開できるよう頑張っていますので、ぜひ楽しみにしてください。ご清聴ありがとうございました。


中国市場への進出を支える
最新テクノロジーのご紹介

〈講演者〉
Tencent Cloud
シニアソリューション アーキテクト
フ コウ氏

中国市場への進出というテーマですが、私のイメージでは中国に会社を作る必要はなく、日本企業がインバウンド事業として展開する事もある意味では進出することになるのではないかと思います。 進出する際にはWeChatのエコシステムを活用していただければと思います。その中心になるのはWeChat公式アカウントとミニプログラムのふたつです。今回は、ミニプログラムをご紹介します。ミニプログラムのコンセプトは、ダウンロード不要でアクセスが簡単でアンインストール不要の自動終了であることです。

WeChatは中国人のデジタルのアプリケーションで一番使われていて、利用者の約50%が1日に90分以上使っており、そのほとんどがコミュニケーションツールとしてチャットを使っています。

1999年〜2017年の18年間でリリースしたプログラムは100万個ほどです。その中でミニプログラムを使った深センの空港での事例を紹介します。プログラム上には、出発、到着、乗継、送迎という4つのシナリオに応じた空港サービスが表示されます。自分が搭乗する飛行機の遅延情報もわかりますし、空港内で食事をする際に飲食店を検索して詳細を見ることも可能です。このようなサービスは広告やユーザーの利便性向上のために活用できますが、空港運営事業者が最も重視しているのはデータです。我々は利用情報をもとにユーザーのプロファイルを作り、性別等の簡単な属性以外にも空港までのルートや買い物をする際の傾向等を抽出します。構成されたプロファイルはユーザープロモーションなどに活用されます。

中国の他の空港や航空会社でも導入事例があり同様のサービスを提供しています。日本でも関西空港と羽田空港をWeChatで検索していただければ、同じくミニプログラムを使用することが出来ます。是非検索してみてください。 本日はありがとうございました。