株式会社Kinishはイネから牛乳たんぱく質を取り出す技術によって、アイスクリーム等の代替乳製品を開発している。
今回は本事業で実施するOUTBOUND PROGRAMシリコンバレーコース(2023年度)および英国コース(2024年度)の採択スタートアップである同社CEO 橋詰氏に、どのように海外展開の準備を進めているか、どのような困難に挑戦しているのか、またX-HUBのプログラムで役に立ったことは何か、そして、今後の海外展開に向けた展望について話を伺った。
- それではまず、御社の事業概要について教えてください。
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当社はイネから牛乳たんぱく質を取り出す技術を開発し、将来的にはその技術を使ってアイスクリーム等の代替乳製品開発・販売を行う、フードテックスタートアップです。植物はその生理的仕組みを活用することで外部の遺伝子を内部に反映させることが可能であり、その特徴を活用して牛乳たんぱく質を含む遺伝子をイネに入れ込み、牛乳たんぱく質を生産するイネをつくります。こうした独自に開発した品種を植物工場で大量栽培するのですが、当社が開発したイネは高さ20cm程度と小型の品種であるため、収穫までの期間短縮や多段栽培による効率的な生産が可能となっています。
一方、上記のような技術開発は時間を要するため、並行してブランド開発を行っております。そもそもお米には、豊富なでんぷんをうまく活用することで甘いシロップになるという特徴があり、まずは屋外で栽培されている普通のお米をシロップ化した原材料を使い、アイスクリームなどの代替乳製品の開発・販売を行っています。現在は、日本と米国でお米からできたアイスクリームを販売しています。
- 次に、御社が海外展開を目指す理由と現在の進捗状況について教えてください。
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展開を進めているエリアは主に米国です。米国は「Day0」から見据えていました。創業時に米国企業を参考にしていた点もあるのですが、やはり米国はマーケットが広大で、新しい食品が広まるカルチャーがある点が魅力的でした。現在、米国では事業開発を進めています。現地では植物性乳食品の市場が定着している一方、味に課題意識がある点から、「おいしい乳製品」には明確なニーズがあることを実感します。
一方、米国で事業展開する中で出会ったヨーロッパの方から、「欧州も視野に入れるべき」という声をよく耳にしました。欧州では既に植物性乳食品がメジャーで、その中でも英国はフード・バイオの技術分野が活発という背景があり、英国における現地の食習慣や技術動向の把握も並行して進めています。
- 海外展開を進める上で特に課題だと感じることは何でしょうか?
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海外で事業を展開するためには、信頼できる人物やコネクションを多く持つ人物といかに知り合えるかが重要になると感じています。
特にフード領域では現地の食習慣等「誰でも語れること(例: アメリカ人は~を好む傾向がある)」が根拠や洞察なしに語られることが多く、情報をそのまま鵜吞みにすると現実とは異なっていた、ということがしばしば発生します。そのため、知り得たことを俯瞰しつつも深い示唆を提示できる「信頼できる人物」に出会えるかどうかが、海外ビジネスで成功するための鍵だと思います。さらに、米国ではこれだけテクノロジーが発展していても、リアルな繋がりがコミュニティを形成しているため、信頼がないと現地のネットワークに入り込んで情報を収集し事業展開に活かすことができません。加えて資金面でも課題があります。物価水準や市場性(例: 時価総額と資金調達のボリューム)を加味すると、体感では日本で資金調達を行っても、米国で必要となる金額の約10分の1~5分の1程度に収まることが多いため、効率の良いアプローチ先を検討する等、知恵を絞ることも必要だと考えています。
- 御社には本事業OUTBOUND PROGRAMにご参加いただきましたが、X-HUBのプログラムはどのような点で役に立ちましたか?
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2023年度に参加したシリコンバレーコースでは、シリコンバレーのスタンダードとして起業家に求められることを教えてもらい、非常に刺激的な時間となりました。例えば、現地のピッチには構成やスライドの書き方、プレゼンテーション等の「フォーマット」があり、こうしたシリコンバレーの流儀を知らないと話すら聞いてもらえないため、徹底的に修正・指導を受けました。
また、現地展開におけるマインドセットという視点で非常に印象深い出来事がありました。このコースではネットワーキングの時間も多かったのですが、あるネットワーキングでは現地の大手フードテック企業の創業メンバーが参加しました。日本人参加者は約10名ほどいたのですが、本コースをリードしていたシリコンバレーのアクセラレーターの方は、そんな中でも「これはあなたにとってまたとないチャンスだ。たくさん質問するように。」と事前に私に耳打ちした他、私が質問しているとカンペで「今この場でミーティングを調整しろ」と伝えてくれ、実際に大勢が参加するそのセッション中に個別ミーティングをセットすることができました。余談ですが、このセッションで出会えた(大手フードテック企業の)彼とは定期的に話す仲となっています。
日本ではこういった行動は自己中心的な行動として避けられると思いますが、このコースを通じて「チャンスは、何が何でも絶対に逃さない」という姿勢が世界で勝つには必要不可欠と感じました。
- 御社の今後の海外展開の展望について教えてください。
- 今まで米国ではテスト販売を中心に実施していましたが、今後はより一層米国に注力し、商品の販売網を広げるために2026年以降は現地で半移住のような生活をしながらマーケット開拓を急速に進めていきたいと考えています。その過程ではネットワークや資金の点で悩む部分も出てくるかと思いますが、X-HUBのOUTBOUND PROGRAMで巡り合えた現地の方々の助力を得ながら乗り越えていきたいと思います。
インタビューはKinish様のオフィスにお伺いして行いました。
橋詰様、ありがとうございました!
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▼今回お話を伺ったスタートアップ企業のHPはこちら
https://kini-sh.com/ja/
▼X-HUB OUTBOUND PROGRAMの紹介ページはこちら
https://www.x-hub-tokyo.metro.tokyo.lg.jp/outbound_program
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