TopoLogic株式会社は「トポロジカル磁性体」と呼ばれる新材料を使った高性能半導体メモリやセンサ技術の開発を行っている。大学の材料シーズをベースに、それを応用した半導体事業の開発と社会実装に注力しているディープテック分野の東大発スタートアップである。
※トポロジカル磁性体:特殊な帯状の電子構造を持っており、それに起因するユニークな振る舞いを持つ磁性材料

今回は本事業の2024年度SCRUM PROGRAMの採択スタートアップである同社CEO 佐藤氏に、どのように海外展開の準備を進めているか、どのような困難に挑戦しているのか、またX-HUBのプログラムで役に立ったことは何か、そして、今後の海外展開に向けた展望について話を伺った。


それではまず、御社の事業概要について教えてください。
当社は東京大学理学部物理学科の研究室から創業したスタートアップです。トポロジカル物質の中でも、特にトポロジカル磁性体の特性を活用した半導体開発に取り組んでいます。大学発の材料シーズを基盤とし、それを応用した半導体の開発および社会実装を目指しており、製造プロセスやデバイス設計に精通した人材が集結しています。現在はメモリとセンサの2つの事業を展開しており、いずれもトポロジカル物質特有の物理的効果を応用しています。この技術によって、これまでにない構造を持つセンサや新しい動作原理のメモリを製造することが可能です。従来の製品とは(書き込み速度や容量などの点で)桁違いの性能を実現でき、既存の製品をいくら改良しても「桁は超えられない」と考えています。

次に、御社が海外展開を目指す理由と現在の進捗状況について教えてください。
海外展開を進めているエリアは米国・韓国・台湾です。その理由は製造の観点でも、設計の観点でも、当社の技術を売り込むことができる先がその3か国のみであるためです。半導体業界ではグローバルサプライチェーンに参入しなければ全く売上が立たないため「海外展開をしようと思った」というより、創業当初より「(海外展開を)しないと仕事にならない」と捉えています。現在は、開発連携先の拡大と資金調達先の多国籍化の2つに注力しています。開発連携については、台湾と米国ニューヨークで試作パートナーを積極的に探しています。資金調達では、半導体業界のネットワーク構築を狙いながら、半導体業界出身者で構成されるファンドに声をかけています。

海外での資金調達を目指す上で特に課題だと感じることは何でしょうか?
商習慣の違いや半導体業界特有の課題を強く感じています。日本は海外から見ると独自の投資商習慣や意思決定プロセスを持っており、その違いが海外VCにとって障壁となることが多いです。例えば、日本のVCは投資条項に上場努力義務を求めるケースが多いですが、米国や欧州ではほとんど見られません。そのため、日本の既存投資家がいる状態で海外から資金調達を進める際、こうした商習慣の差異がボトルネックとなります。また、半導体業界は規制業界の側面もあり、直接投資にはFDIのクリアランスが必要で、出資までに時間を要することも課題です。その他、社内の英語人材を増やすことも必要です。英語を話せることで進度が変わるため、体制強化も検討中です。

御社には2024年度にX-HUB SCRUM PROGRAMにご参加いただきましたが、X-HUBのプログラムはどのような点で役に立ちましたか?
半導体産業や投資家とのネットワーク強化を目指し、そのような機会が得られるプログラムを常に探していました。その中で本プログラムの案内があり、応募を決めました。参加して特に良かった点は、海外VCとのコネクションを得られたことです。これは当初まさに期待していた通りで、大いに役立ちました。さらに、プログラム内では海外VCに対して1on1でピッチを行い、直接フィードバックをもらう練習の機会もありました。こうした実践的な経験は他のプログラムではなかなか得られず、非常に貴重でした。また、海外VCと会う前にはその準備として英文ピッチに関する座学もあり、この講座を通じて英語資料作成のハードルが下がったと感じています。

御社の今後の海外展開の展望について教えてください。
今後の展望として、まず次の資金調達ラウンドでは海外VCを入れたいと考えています。また、関連マーケットの企業が実施するアクセラレーションプログラムの活用も視野に入れており、特に現地でのネットワーク形成を重視したプログラムに参加し、現地ニーズを深く掘り下げながら関係構築を進めたいと考えています。現在の拠点は日本のみですが、将来的には海外にも拠点を設けることを検討しています。例えば、台湾での試作活動の関係から、為替リスクや日本からの送金手数料を回避する目的で、いずれかの段階で現地登記を行う可能性があります。米国については、「攻めるマーケット」として認知度向上を目指し、マーケット拠点としての登記も選択肢に入れています。

インタビューはTopoLogic様のオフィスにお伺いして行いました。
佐藤様、ありがとうございました!


▼今回お話を伺ったスタートアップ企業のHPはこちら
https://www.topologic.jp/

▼X-HUB SCRUM PROGRAMの紹介ページはこちら
https://www.x-hub-tokyo.metro.tokyo.lg.jp/scrum_program

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