韓国市場への進出を検討されている方の中には、「韓国進出に興味はあるものの、どこから着手すべきかわからない」「韓国市場の特性や注意点を把握したい」といった課題をお持ちの方もいるのではないでしょうか。

この記事では、韓国への進出を検討している企業様向けに、基礎情報や経済の特徴、そしてメリットやデメリット・注意点を分かりやすく解説します。韓国市場について理解を深めることで、自社に最適な業種やジャンルを見極め、ビジネス展開における対策も立てやすくなります。

このような事前準備を通じて韓国市場の全体像を把握し、自社の製品やサービスを戦略的にアピールすることで、ビジネスチャンスを最大限に活用する道筋が見えてくることでしょう。

韓国の基礎情報と経済の特徴

韓国市場への進出を考える上で、まずは韓国の基本的な情報と経済動向を理解することが重要です。韓国の主要な特徴と経済構造について解説します。

韓国の基礎情報

韓国は面積が約10万㎢、2023年時点で人口約5,156万人の国で、公用語は韓国語です。日本と比較すると、面積は4分の1、人口は約2分の1の規模となります。

韓国は現在、深刻な少子高齢化に直面しており、2023年の合計特殊出生率は0.72と過去最低を記録しています。また、全人口の50.5%が首都圏に集中しており、地方との経済格差が大きな課題の一つです。

韓国の特徴として、高い教育水準が挙げられ、人材育成が経済発展の原動力となっています。一方で、教育への積極的な投資は行われているものの、学生の過度なストレスや競争の激化といった社会問題も生み出しています。

貿易

韓国の主要産業は電気・電子機器、自動車、鉄鋼、石油化学、造船です。2023年の実質GDP成長率は前年の2.6%から1.4%に低下しています。

韓国は輸出主導型の経済成長を遂げており、輸出の対GDP比率は48.3%と高水準を維持しています。主な輸出相手国は中国、米国、ベトナム、日本、香港で、主要輸出品目として集積回路、自動車、石油製品、自動車部品が挙げられます。

輸入については、主な相手国が中国、米国、日本、オーストラリア、ベトナムで、主要品目は集積回路、石油製品、半導体部品・附属品、自動車、電話機器です。サムスンやLGといった韓国企業は世界市場で強い存在感を示しており、特にハイテク産業、IT、電子産業において高い競争力を有しています。

経済構造

韓国経済は「財閥」と呼ばれる大企業グループが主導する特徴を持っています。サムスン、現代自動車(ヒュンダイ)、SK、LGが四大財閥として知られています。

2023年通年の韓国の名目GDPは2,236兆ウォン(約252兆円)であり、そのうち20大財閥企業の総売上高が1,625兆ウォン(約180兆円)と全体の72.7%を占め、経済の効率性向上に貢献しています。この集中は経済の効率性向上に寄与している一方で、中小企業の成長機会を制限する要因となっています。

近年、韓国政府は新たな産業の創出を国家的な目標とし、スタートアップエコシステムの構築に力を入れてきました。政府主導による積極的な支援策は、ベンチャー投資金額や新設企業数の飛躍的な増加に繋がっています。

2006年から2022年までの間に、ベンチャー投資額は7,000億ウォンから12兆5,000億ウォンへと大幅に拡大し、新設企業数も5万社から約12万社へと増加しました。2008年の創業振興院の設立、2017年の中小ベンチャー企業部の設立、直近では2023年の「スタートアップ・コリア総合対策」の発表など、韓国はベンチャー・スタートアップ企業を経済成長の牽引役として位置付け、新産業の創出と革新促進に向けた取り組みを加速させています。

出典:外務省「大韓民国」

韓国進出のメリット


続いて、韓国進出のメリットについて具体的に見ていきましょう。韓国進出のメリットは大きく分けて4つあります。

地理的な近さ

距離が近いことで、物流コストや移動時間を大幅に削減できます。頻繁な訪問が可能で、迅速な意思決定や問題解決がしやすく、時差がないことも大きなメリットです。

日本文化への理解

2023年の訪日外国人観光客数で韓国は695万人を超え、1位を記録しています。この日本への親和性は、市場参入をスムーズに進められる可能性があります。

また、韓国の多くの中学校・高校では第二言語として日本語を選択できるため、日本語が通じることが多く、コミュニケーションが比較的容易な点もメリットと言えるでしょう。

トレンドに敏感な消費者層

韓国は、K-POP、韓国コスメ、韓国グルメなど、世界的な人気を誇る独自の文化発信力を持つ国です。若年層を中心にトレンドに敏感な消費者が多く、新しい商品やサービスに対する受容性が高い点が特徴です。

特に、ファッション、美容、テクノロジー、食品、エンターテイメントといった分野においては、その影響力は大きく、世界中から注目を集めています。これらの分野への参入は韓国市場での成功につながるだけでなく、世界市場への足がかりとしても有効です。革新的な商品やサービスを展開する企業にとっては、テストマーケティングの場としても適しているでしょう。

さらに、インターネット普及率97.42%という高いデジタル化を背景に、クーパン(Coupang)、11番街(11st)、Gマーケット(Gmarket)などを中心にEC市場も拡大傾向にあります。SNSを活用したインフルエンサーマーケティングも盛んに行われているため、韓国での成功にはデジタルマーケティング戦略が欠かせません。

高度な技術力と人材

韓国はIT、半導体、自動車などの分野で高度な技術力を持ち、政府もIT産業を積極的に支援しています。教育面では、2007年には中学・高校でプログラミング教育が選択科目として導入され、2017年には小学校でソフトウェアが必修科目となりました。

このような取り組みにより、専門知識と技術を備えた優秀な人材が豊富で、質の高い製品やサービスの提供が可能となっています。韓国進出を検討する際には、これらの現地IT技術や人材を活用した新規事業展開も有望な選択肢となるでしょう。

韓国進出のデメリット・注意点

最後に、韓国進出における主なデメリットと注意すべき点について見ていきましょう。

競争の激しさ

韓国企業は優れた技術力と価格競争力を有しています。市場では同質な製品やサービスが増加しているため、さらにブランド力やデザイン性の強化などを通じて、差別化された商品やサービスを提供することが不可欠です。特に大手財閥が市場を占める中では、新規参入企業や中小企業はより一層の独自性と競争力が求められます。

また、韓国市場は流行の変化が目まぐるしく、トレンドのサイクルが短いのが特徴です。特に、若年層を中心に新しい情報やトレンドへの関心が高く、その変化も急速です。そのため、綿密な市場調査とトレンド分析を行い、現地のニーズを迅速に把握し、変化に対応した商品やサービスを提供する必要があります。

文化の違い

地理的に近接していても、さまざまな文化的な違いが存在します。特に、韓国では儒教の影響が強く、年長者への敬意や上下関係が日本以上に重んじられています。また、食事の際に器を手に持つことがマナー違反とされるなど、食事のマナーも異なります。このような違いに対応するため、現地での文化研修の実施や、具体的なビジネスマナーについてのガイドラインを作成するなど、対策を講じていくとよいでしょう。

デジタル化への対応

現金や紙の書類を重視する場面が多い日本とは異なり、韓国ではデジタル技術の活用が進んでいます.
電子決済や電子署名などの普及率が非常に高く、Kakao PayやNaver Payといったモバイル決済アプリが広く浸透し、日常生活のあらゆる場面でキャッシュレス化が定着しています。

さらに、行政手続きや民間取引においても電子化が進み、申請や契約の効率化が図られています。このようなデジタル環境は、韓国市場への進出を検討する企業にとって、事前に対応しておくべき重要なポイントと言えるでしょう。特に、モバイル決済サービスとの連携や電子契約システムの導入は、進出に向け必ず検討したい項目です。

政治情勢の変化

政権交代による政策の変更は、社会や経済に影響を及ぼす可能性があります。企業活動においては、こうした政治情勢の変化を常に考慮に入れる必要があります。

さらに、日韓両国間の歴史に関する問題に起因する突発的な政治問題が、ビジネスに予期せぬ影響を及ぼす可能性もあります。消費者感情やメディア報道に注意を向け、状況に応じて迅速に対応できる体制を整えておくことが重要です。

まとめ

韓国の経済は財閥と呼ばれる大企業が主導しており、特にITや電子産業が強みです。世界有数の経済規模を誇るため、韓国市場での成功は企業に大きな成長をもたらす可能性を秘めています。

ただし、進出にあたっては、サムスンやLGといった大企業との競争や、めまぐるしく変化する消費者トレンドなど、克服すべき課題も多く存在します。自社の強みを最大限に活かしつつ、最新の市場動向を把握し、韓国の消費者に響くマーケティング戦略を立てる必要があるでしょう。

さらに、ビジネスマナーやコミュニケーションスタイルなど、日本とは異なるビジネス文化を理解し、現地企業との信頼関係構築に努めることも重要です。事前に十分な市場調査を行い、自社の製品やサービスに最適な市場を見極め、競合との差別化を図ることが成功への近道となります。

東京都が主催する「X-HUB TOKYO」は、都内のスタートアップ企業の海外進出を支援する事業です。海外進出に必要な情報提供や、実例に基づいたサポートなど、多様なサービスを展開しています。最新のイベント情報をチェックして、海外展開への第一歩を踏み出しましょう。

【この記事の執筆】

hawaiiwater

「X-HUB TOKYO」Webマガジン編集部

この記事は、東京都主催の海外進出支援プログラム「X-HUB TOKYO」の編集部が監修しており、スタートアップの海外進出に関して役立つ情報発信を目指しています。

「X-HUB TOKYO」について詳しくはこちら