グローバル化が進み、外国法人との取引も増加しています。外国法人に支払いをする場合は税制面でも注意が必要です。外注費などの費用にかかる消費税の扱いについてまとめました。

外国法人との取引は源泉徴収に注意

海外進出したり、海外の会社と取引したりする場合、海外の企業への支払いが発生します。例えば外国法人から仕入れをする、もしくは海外から技術者を招いて対価を支払うケースなどです。

外国法人所有の不動産を借りている場合や、特許権や商標権の支払いがある場合もあります。そのようなケースでは外国法人に対して支払いを行いますが、その場合、税金はどのように計算すればいいのでしょうか。

源泉徴収とは

外国法人に支払いをする場合に特に注意しなければいけないのが源泉徴収です。所得税は納税者が所得金額と税額を計算して自主的に申告、納付する申告納税が基本です。しかし、給与や報酬を支払う人があらかじめ所得税を徴収して本人の代わりに納める方法があります。それが源泉徴収です。

源泉徴収が必要な報酬の範囲は、個人か法人かによっても違います。例えば原稿料や講演料、専門職に対して支払う報酬も源泉徴収の対象です。

参考:国税局 No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは

源泉徴収を行うのは支払う側

海外取引で源泉徴収を行う必要があるのは、その支払先が「非居住者」または「外国法人」である場合です。日本国内で稼得した「国内源泉所得」に対して課税されます。

源泉徴収が必要な支払いでは、支払いのタイミングで一定の源泉税を差し引きします。100万円の支払いがあり、源泉税率が10%の場合であれば90万円を支払って、10万円は源泉所得税として国に納付する仕組みです。支払側の金銭負担は変わりません。日本国内であれば源泉徴収は一般的なシステムですが、海外では必ずそうとは限りません。

海外に外注費などを支払う際、源泉徴収でトラブルになりやすいケースは、相手企業が源泉徴収を理解してくれないというものです。また源泉徴収を忘れてしまうと、税務調査で源泉徴収漏れが指摘され、後から追加で課税される可能性もあります。

この場合、そもそも源泉徴収が必要であること自体を、相手が認識していない可能性もあります。後で課税となることで余計なコストが発生することもあります。

源泉徴収が必要な海外取引

源泉徴収の対象となるのは、「国内源泉所得」に該当する対価の支払いをした場合です。つまり非居住者や外国法人に、日本で発生した所得があることが条件です。源泉徴収が必要な取引としては以下のようなケースがあるります。

  • 特許権やライセンス料の支払い
  • 機械や不動産などの賃借料
  • 技術者など専門家に対する報酬
  • 技術サービス料やデザイン料
  • 配当や利子の支払い

非居住者

「居住者」とは国内に住所を有し、現在まで引き続き1年以上居所を有する個人のことです。「非居住者」とは、居住者以外の個人をさします。

外国法人

「外国法人」とは、国外に本店又は主たる事務所を有する法人のことです。

参考サイト:国税庁「非居住者等に対する源泉徴収のしくみ」

外国法人からの入金で源泉徴収される場合も

また、外国法人から日本企業への支払いに対して源泉徴収される場合があります。日本から送金する際とは逆のパターンで、日本企業に「海外で発生した所得」がある場合です。例えば、海外からの配当金の入金やロイヤリティ・技術指導料などを受け取る際などがこれに当てはまり、課税の対象となります

取引先の国に源泉徴収の制度があるかどうか、源泉徴収税率は何パーセントかなどは、その国の税法によって異なります。さらに二重課税の解消を目的として租税条約を締結している場合には、所得の種類や条約の内容によって源泉税率は変わってきます。

租税条約の適用を受けるためには届出が必要となりますので、まずは適用が受けられるかどうか確認をすることをおすすめします。

海外への外注費支払いでトラブルになるケース

海外への外注費支払いでトラブルになるケース

そのほか海外への支払いで問題なるケースとして、消費税が挙げられます。消費税はそもそも日本国内で消費されるものに課税されるのが原則です。そのため外国から商品を購入したり、サービスの提供を受けたりした場合も日本国内での消費に該当します。

輸入取引にも消費税は課税される

国内取引と輸入取引は、消費税が課税されます。国内で仕入れたものに消費税を支払うのに対して、海外から仕入れた場合は消費税を支払わないのでは、不公平が生じてしまいます。そこで輸入した商品や海外からの仕入れや外注費にも消費税がかかるのです。

なお消費税は国内の消費に対して課せられる税金のため、「輸出取引」は消費税が免税されます。国外へ輸出される商品が日本でも課税されてしまうと、輸出先の国でも消費税が課税され二重で消費税を支払うことになってしまうからです。

納税義務が免除される「免税事業者」とは

免税事業者とは、消費税の納税義務が免除されている事業者のことを指します。基準期間における課税売上高が1,000万円以下の法人または個人事業主は、消費税の納税義務が免除されます。免税事業者は消費税の納付義務がないので、消費税の還付を受けることができません。

課税事業者とは、基準期間における課税売上高が1,000万円以上を超える納税義務のある法人や個人事業主のことを指します。輸出業者のような経常的に消費税額が還付になる事業者等は、課税事業者を選択する方がよい場合があります。課税事業者となるためには、納税地を所轄する税務署長に「消費税課税事業者選択届出書」を提出する必要があります。この届出を提出した事業者は、原則として2年間は免税事業者に戻ることは出来ません。

参考サイト:国税庁「輸入取引」

外国法人との取引は消費税の扱いに注意が必要

日本国内の取引であれば、消費税が含まれるものはすぐに判断できますが、外国法人との取引では消費税について忘れてしまうケースも珍しくありません。外国から仕入れた商品を日本で販売する場合は、輸入時に輸入消費税を支払うことになります

輸入消費税は消費税を申告するときに支払った消費税として控除が可能です。消費税がかかるのは輸入する商品の他、運賃や関税も含まれ、外注費も税関の手続き関係の消費税が発生します。税関手続き関係を他の会社に一任している場合はその手数料も確認しておきましょう。請求書を確認すると細かく区分されているはずです。さらに、通信費や外国送金手数料、EMSなどの国際郵便代なども消費税の対象となります。

消費税を控除し忘れた場合の処理

輸入消費税の処理を忘れた場合、支払い消費税として控除することができないため、納税負担が大きくなってしまうことがあります。そのような場合、更生請求という手続きで消費税の還付を受けられるケースもあります。ただし、訂正できる期間は申告から5年以内なので早めにチェックしてください。必要な書類として輸出入の請求書や売買契約書、領収書の提出が求められることがあります。すぐに提出できるように分類して保管しておきましょう。

また、消費税の申告が間違っている場合、法人の所得も計算しなおす場合があります。外国法人との取引は見慣れない書類も多く、税金の扱いが複雑です。後から更生の手続きをおこなうよりもあらかじめ区分して整理しておくようにおすすめします。会計ソフトでは勘定科目を取引に合わせて設定することができます。こういったツールも活用してみてください。

まとめ

外国法人への支払いは源泉徴収や手数料など注意すべきポイントがいくつもあります。また、輸出売上がある会社の場合も消費税について注意しなければいけません。税金は制度の有無を知っているかいないかによって大きく額が変わります。海外進出の予定がある場合は、海外の税務に関して経験やノウハウがあるパートナーを選定することが大切です。

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