グローバル化の時代となり、海外進出へのハードルは大きく下がりました。海外事業をおこなうためには、必ずリスク管理も必要になります。リスク管理の必要性や方法についてまとめました。
海外進出するときのリスク管理の重要性
2014年に帝国データバンク産業調査部が実施した「海外進出に関する企業の意識調査」では、企業の海外進出に関する見解について調査しています。この調査で回答した企業のうち、全体の約27.0%が直接・間接のいずれかで海外に進出していることが報告されました。
この調査中でも見逃せないデータが、直接進出企業のうち、約4割が撤退または撤退検討の経験があるということです。とくに中国への進出企業では、法制度や行政手続きなどが取引の足かせとなるケースが散見されています。また海外事業における資金回収の難しさ、現地スタッフの待遇や勤務形態も今後の課題として挙げられています。
企業の規模別にみると大企業においては海外事業における資金回収や法制度を課題として挙げる声が多く、一方で中小企業においては為替レートを課題に挙げる企業が多い傾向があります。
経済産業省のデータでは、毎年2%程度の企業が海外から撤退しています。企業によって海外事業を撤退する理由はそれぞれありますが、事前の備えやリスク管理が足りないことを原因として損失を被ってしまうケースもあり得るのです。
海外にはその国の文化や商習慣、法制度などの事情があります。現地で起こりうるリスクを把握するとともに、長期的ビジョンで対処するようにおすすめします。
参考:帝国データバンク産業調査部 「海外進出に関する企業の意識調査」
海外進出の前に考えておきたいこと
海外進出を検討するためには、まず海外事業の目的を明確化しましょう。たとえばコストの低減や国内需要低下による海外市場への参入など、海外事業を展開する場合は国内での事業に課題を抱えていることもあります。また、海外進出には多大な労力が必要となります。労力と目的が見合っているかも考えておきましょう。
目的に対して自社の基礎体力や経営資源があるかどうかも重要です。海外展開を成功させるためには自社を客観的に把握しておきましょう。たとえば海外からの引き合いや、特許権である知的財産権のような競争力があれば海外でも十分に武器となります。
そのほか、海外事業を計画する段階で、あらかじめ自社の強みや弱みを把握しておきましょう。国内向けの事業をおこなう上での強みと弱みのほか、海外進出することで得られるチャンスとリスクをあらかじめ考えておく必要があります。多くの企業が海外進出しているため、後発となった企業が同じことをしても成功を見込むことはできません。海外進出を自社の分析や新しい戦略の策定のきっかけとしてください。
海外事業のリスク管理のためにおこなうPDCA
海外事業が単発であるか、継続しておこなうものであるかに関わらずリスク管理は必要になります。海外事業のリスク管理におけるPlanはリスクの洗い出しです。進出先の国や企業が持つリスクをピックアップしていきます。例えば国の政情不安や為替のほか、現地取引先との関係などです。リスクをピックアップした後はそれぞれに対応策を講じてください。
リスク管理においてDoに当たるのがリスクへの対処です。為替リスクがある場合には取引を円建てにしたり、外貨建ての債権債務を同額にしたりすることである程度対処することができます。また海外進出する企業向けの貿易保険への加入も検討してみましょう。
リスク管理する上でCheckも欠かせません。あらかじめ計画しておいたように事業が進捗しているかを定期的にチェックするようにしてください。とくに海外法人になると、日本本社からのサポートや管理が行き届かなくなってしまいがちです。定例報告や会議など報告して話し合う場を作り、海外事業の計画に遅れやトラブルがあった場合は、早い段階で対処しましょう。
Actionでは、事業の進捗に合わせて必要な対応をおこないます。たとえば事業の進行が遅れている場合は原材料やスタッフの増員など必要な対策を講じましょう。このPDCAサイクルは事業の操業がスタートしてからも、その都度見直しと対策を繰り返します。リスクは時と場合によって変化します。その時々に応じて計画を立て直すようにしましょう。事業計画とともにPDCAサイクルも策定してください。
まとめ
海外進出する場合は、海外への印象や雰囲気に惑わされることなく、客観的にリスクや事業としての見込みを判断するようにしましょう。海外事業をするためにはフレキシブルな対応が求められます。スケジュールの遅延や現地パートナーとのトラブル、業績の不振等ある程度本社でもカバーできるようにリスク管理しておくことが必要です。海外事業のリスク管理には現地に詳しいコンサルティング会社のノウハウを活用することも検討してください。