企業会計において、受取配当金は法人税の計算に関わります。受取配当金の扱いは国内で受けるものと海外から受けるものとで扱いは異なるのでしょうか。海外法人からの受取配当金の扱いについてまとめました。

受取配当金の扱い

企業会計上、受取配当金は「営業外収益」に計上されます。つまり、受取配当金は利益として扱われるのです。一方で、法人税の計算においては必要な手続きをおこなうことで益金に参入しなくてもよいとされています。これが「受取配当金益金不算入制度」です。受取配当金が益金不算入となることで、益金に対応する法人税等も少なくなります。受取配当金以外に、投資信託の収益分配金などもこれに該当します。

上記の益金不算入は国内法人による配当に対応するものです。外国法人の場合、子会社か子会社ではない海外法人かによって扱いが異なります。

まず、外国子会社以外の外国法人からの配当を紹介します。外国子会社以外の外国法人からの受取配当金は、原則として全額が益金算入になります。つまり、外国子会社以外の外国法人から受取配当金を受け取った場合は利益となり、法人税上課税される仕組みです。

参考サイト:国税庁 別表八 「受取配当等の益金不算入に関する明細書

海外子会社からの配当の益金不算入制度とは

海外子会社とは、該当する内国法人の出資比率が25%以上かつ、保有期間が6ヵ月以上の外国法人を指します。ただし、この出資比率は外国法人が属している国との租税条約で異なる比率が定められている場合があります。つまり、どこの国に子会社を作ったかによって子会社の扱いが全く異なるということ。日本と異なる比率が定められている場合はその国の比率によって判断されるため、必ず租税条約を確認しましょう。

代表的な国としては、アメリカやブラジル、オーストラリア、カザフスタンは10%の保有、フランスの場合は15%の保有で子会社として認められます。つまり、益金不算入にできる配当金の範囲も広がるということです。

海外子会社からの配当の益金不算入制度において、海外子会社からの受取配当金は企業会計上、利益として扱います。税制上は、その配当額の95%相当は益金に参入しないという扱いです。

この制度は平成21年度税制改正により創設された制度で、この制度を適用するためには確定申告書の「外国子会社から受ける配当等の益金不算入等に関する明細書」に益金の額に算入されない配当などの額およびその計算に関する明細を記載します。また、必要な書類を保存しておく必要があります。

95%が益金不算入ということは、逆に言うと5%は課税ということ。つまり1,000万円が配当された場合には50万円が課税されます。

従来制度からの変更点

海外子会社からの配当の益金不算入制度が創設される以前は、外国子会社からの受取配当金を益金として扱っていました。しかし、そもそも配当とはすでに法人税後の剰余金を分配するものです。そのため外国子会社からの配当金を益金に参入してしまうと外国と日本での法人税が二重に課税されてしまうことになります。このような重複した課税をなくすために間接外国税額控除という制度が利用されていました。

これは外国で課された法人税のうち、配当金にかかる部分を日本での法人税から控除する仕組みになっています。言い換えるなら外国での法人税を日本での法人税の前払いとみなす制度です。

海外からの収入は受取配当金に限りません。運用益や不動産収入、国外の著作権などの収入がある場合、その国で税金が差し引かれます。また、日本にいれば海外での収入も日本の所得とみなされ二重で課税されてしまいます。そこで二重に課税されないために生まれた仕組みが外国税額控除なのです。

上記の外国税額控除の場合、外国子会社からの配当については日本の法人税率で計算されます。一方、外国子会社配当益金不算入の場合は外国の法人税率による課税で完結するという変更になりました。

適用対象とならない配当金


しかし、海外子会社からの配当の益金不算入制度が適用対象とならない配当金もあります。配当金の全部もしくは一部が、その国の法令において所得の計算上、損金に算入する場合には、海外子会社からの配当の益金不算入制度が適用されません。つまり、外国子会社の配当金の額が損金算入された場合は、日本において益金として扱われます。

外国子会社が自己株式取得を予定している株式も、海外子会社からの配当の益金不算入制度は適用されません。例えば、上場している外国子会社が自己株式を公開買い付けしている期間中に日本法人が追加取得した場合がこれに該当します。この場合、公開買い付けによってみなし配当が生じますが、このみなし配当については益金算入されます。

まとめ

外国子会社配当益金不算入制度は、日本の企業が海外で得る利益を海外ではなく国内に還元する目的で生まれました。外国の収入はその種類によって扱いが全く違います。海外進出する企業が増える中で、当然海外での収入も増えています。税金制度を知らないままにすると余計に税金を支払ってしまう可能性がありますこともあるでしょう。不安な場合は税務署などにあらかじめ相談しておくことをおすすめします。

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