海外進出においてローカライズはどのような役割を持っているのか、知りたい人も多いかもしれません。ローカライズを行うと、日本企業が海外に進出する際に、その国や地域に合わせた事業展開が可能になるなどのメリットがあります。

日本とは異なる点の多い海外進出ですが、新しい市場への事業展開を成功させるにはどのような点に留意する必要があるのでしょう。適切かつ効果的に海外進出を行うため、ローカライズをどう取り入れるべきか、押さえるべきポイントは何か、海外進出におけるローカライズについてまとめました。

ローカライズとは「進出先に対応させること」

ローカライズは、海外進出を検討する際のマーケティング戦略で重要視される項目のひとつです。現地を意識したマーケティング戦略によって、効果的な海外進出が行えます。

ローカライズとは

「ローカライズ(ローカライゼーション)」とは、日本語で「地域化」や「現地化」を意味する言葉です。もともとはIT業界でよく使われていた言葉で、ソフトウェア・システムのメニュー・メッセージなどを翻訳することを意味していました。

ローカライズにより別の国や地域の言葉が翻訳されるため、異なる国でもソフトウェアの利用が可能になります。現在では、地域のニーズに合わせてコンテンツを作成することがローカライズと呼ばれています。

各国で使われている言語を翻訳するだけでなく、文化や習慣・法規制などに合わせてデザインを変え、必要な機能を追加することで、市場価値を高められるでしょう。

ローカライズの目的

ローカライズの目的は、製品・サービスを国によって異なる文化や習慣などに対応させて地域のニーズに合わせて作ることで幅広い市場で認められるようにすることです。

商品のブランディングやターゲティングなども視野に入れ、市場で認められるデザイン・機能などを採用して商品を作り上げると、マーケティングも効果的に行えるでしょう。

ローカライズの重要性

国や地域によって言葉や文化は異なり、多くの人が好むデザイン・色合いにも違いがあります。消費者に商品に興味を持ってもらうには、多くの人々に好まれ、興味を持ってもらえる現地向けデザインなどを用いることが重要です。

たとえば、商品に採用しているパッケージが一部の国や地域では好まれていたとしても、多くの国で嫌悪されているデザインの場合はどうでしょう。そのまま商品のグローバル化を進めてしまうと、売り上げが伸びずに失敗してしまうリスクが高まります。また多機能な商品を販売していた場合です。一定の国でのみ必要とされる機能ばかり搭載されていると、ほかの国で使える機能が少なくなるため、複数の国で販売する場合には消費者の多様なニーズに応えられません。

一からグローバルな商品を作るのではなく、既存の商品を海外で販売する場合にはとくに、各市場で消費者に商品の特長・メリットなどを理解してもらえるような、マーケティング戦略を行う必要があります。

海外進出のメリット

海外進出は、国内市場だけで行っていたビジネスを大幅に拡張できるチャンスです。日本企業が国内で販売している商品の売り上げをさらに伸ばしたい場合には、グローバル市場への進出が欠かせません。

競合他社よりもいち早く将来性の高い市場で製品・サービスの提供を行い事業展開することで、国内では得られなかった利益まで獲得できます。継続して安定した利益を得られるまでには、事業の具体的な内容などを何度も修正・改善していく必要があるでしょう。

ローカライズすべき「3つのメリット」

海外進出の際にローカライズを行うことで、「市場拡大や収益増加」「顧客との共感・信頼関係の構築」「競合他社との差別化」の主に3つのメリットが得られます。ローカライズによって、求められる商品・サービスを海外市場に投入することが可能になり、海外展開の成功が期待できます。

市場拡大と収益増加

ローカライズを意識したマーケティング戦略を用いると、現地の消費者のニーズに合う商品で海外市場に参入できます。ただ日本の商品を海外に輸出するのではなく、進出する国や地域の文化などに対応した商品・サービスを提供できるため、商品が市場で受け入れられやすいメリットがあります。

進出先の言語や文化などに適したコンテンツを制作することも、ターゲット層へのアプローチになり新規顧客の開拓につながるでしょう。多様な市場に商品やサービスを対応させることが、売り上げの増加、市場でのシェア拡大に役立ちます。

顧客との共感・信頼関係の構築

自社サイトなどで各地域の文化・習慣などに合わせた現地で好まれるコンテンツの提供は、顧客に対する自社のブランディングにもつながります。現地でよく使用される言語・好まれるデザイン・画像などを用いたコンテンツで、顧客に親近感を持ってもらうなど、ブランドイメージの向上に活かせるでしょう。

コンテンツなどを利用して顧客とのコミュニケーションを行うことも重要です。顧客とコミュニケーションを取りながら、市場のニーズを把握し商品の改善を続け、リピーターの増加やブランドへの信頼獲得を目指してください。

競合他社との差別化

自社以外にも海外企業などが多数参入しているグローバル市場では、競合他社との差別化が欠かせません。商品が現地の消費者に選ばれるためには、商品のイメージアップや興味を引くためのマーケティング戦略が重要です。

ローカライズで現地のニーズに合わせ、他社とは異なる商品やサービスの提供を行うことで、市場での競争力強化が可能になります。

ローカライズを行う際の「ポイント・課題」

ローカライズを成功させるには、各地域に適した方法で行う必要があります。ローカライズは、文化・商習慣・法律、市場のニーズなどに合わせて行うなど、ポイントを押さえて行うことで新規顧客の獲得や、リピートにつなげられるでしょう。

文化・商習慣・法律

文化や商習慣、法律は、国によって異なります。食文化、宗教的な禁止事項、価値観や考え方など、さまざまな違いがあるため、ローカライズに現地の方の意見を取り入れることは欠かせません。

商習慣においても、日本とのさまざまな違いに注意が必要です。現地企業との連絡の取り方や商談、契約時などにはその地域ごとのビジネスマナーが重要になります。

現地企業との取引を行う際には、トラブルを避けるためにも現地の商習慣に合わせることが重要です。国によって決済方法も違うため、進出先で主に使用されている決済方法なども事前に確認しておきましょう。

海外進出の際には、進出先の国の法律も把握しなければなりません。現地で雇用する社員の給与体系や昇進システムの最適化も行います。

市場のニーズ

自社商品・サービスが進出先の市場ニーズに合っているかどうかも重要なポイントのひとつです。自社商品を市場に効果的に展開していくため、最初にニーズの高いターゲット市場はどこか、消費者をセグメントで分けて市場を明確にしておきましょう。

現地のターゲットユーザーの消費者行動や文化を把握して、ニーズに適した商品や機能・サービスを提供できると、売り上げ向上の可能性が高まります。市場調査や顧客のフィードバックを活用して商品の改良を続け、ニーズに応えていくことも重要です。

デザイン

商品やサービスのデザイン、自社サイトのデザインなどは、日本のものがそのまま進出先で受け入れられるとは限りません。パッケージに記載されたメッセージは、直訳ではなく地域や文化に対応した言葉や言語を選んで記載する、デザインも地域の文化に合う画像や色合い・レイアウトなどで作り直すことで、変更前よりも現地ユーザーへの訴求力が高まります。

現地の文化や習慣を考慮したデザインを採用すると、進出先の人々が見慣れないデザインを使用しているケースよりも親しみを持ってもらえます。親しみやすいブランドイメージの構築にもつながるでしょう。

カスタマーサポート

現地であまり知られていない商品やサービスを提供する場合などはとくに、ユーザーが商品に関する疑問を持つことがよくあります。ユーザーの疑問にすぐ対応できるように、現地向けのFAQ・マニュアルなどを自社サイトで公開する、受付窓口を設置するなど、カスタマーサポートの充実も求められます。

購入後のフォローを適切に行うことで、よい口コミや評価、リピーターの増加が期待できるでしょう。

成果測定と戦略の改善

ローカライズを行って国や地域に適した方法で進出した後にも、定期的に成果を測定して問題点を明確にし、戦略の見直し・改善を行うPDCAサイクルを回すことが重要です。目標を達成するために「KPI(重要業績評価指標)」を正しく設定することで、達成状況を定点観測し、目標に向けた改善が行えます。

達成状況から、必要に応じてマーケティング戦略の見直しをし、適切な改善策を取り入れられると、成果の最大化が実現できるでしょう。

まとめ

海外進出では、現地のニーズに合う商品・サービスの提供が欠かせません。日本とは言語・文化などさまざまな違いがある現地でのビジネスでは、文化などの違いを理解して効果的なマーケティングを実施するためにも現地調査を行い、常に改善していくことで新しい市場の開拓を成功させられるでしょう。

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hawaiiwater

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