日本の約5倍の国土と、約2億8,000人という世界第4位の人口を持つ国インドネシアは、ASEANの中でも存在感が大きな国です。これから消費市場としても期待されるインドネシアの法人税や会社設立の制度について紹介します。

インドネシアへの進出形態

インドネシアは多民族、多言語国家として知られ、多くの資源に恵まれた国です。日本からは自動車製造業や大手食品企業などさまざまな企業がインドネシアに進出しています。その中にはインドネシアをマーケットとして事業を行う企業もあれば、インドネシアで製造して他国に輸送するといったビジネスを行なっている企業もあります。

インドネシアで事業を行うには現地法人を設立するか、支店や駐在員事務所を作るという選択肢があります。現地法人には内資法人と外資法人に分けられ、この2つは進出時の制限や規制が違うため条件を比べてから選択するようにしましょう。

またインドネシアで支店を設立する場合、特定の業種以外は支店設立できません。そのため外資企業がインドネシアに進出する場合は、子会社か駐在員事務所を選択します。

現地法人の設立

インドネシアで現地法人を設立する場合、日本の株式会社にあたる「PT((Perseroan Terbatas))」を設立することになります。「PT」は、外資法人である(PMA:Penanaman Model Asing)と、内資法人である(PMDN:Penanaman Model Dalam Negri)の2種類に分けられます。

内資法人(PMDN)

PMDNのメリットは、比較的規制が少なく、最低払込資本金が5,000万ルピア(日本円で約47万円 2022年11月時点)と少額で設立できる点です。また内資法人のPMDNの場合は、ネガティブリストに関係なくライセンスを取得することができます。

外資法人(PMA)

外資法人のメリットは、外資100%でインドネシアへ進出できることです。ただし外資法人であるPMAでは、ネガティブリストに該当する小売業や飲食業の事業分野では資本比率などの規制を受けます。

また、PMAの最低払込資本金は100億ルピア(日本円で約9,350万円 2022年11月時点)以上、かつ土地建物を除く投資計画100億ルピア超の場合に設立可能とかなり高額です。そのため資本が潤沢にあってネガティブリストに関係ない業種であれば外資法人(PMA)でも問題ありませんが、多額の投資を避けたい、ネガティブリストに関係する業種である場合は内資法人(PMDN)が適しています。

内資法人(PMDN)のリスク

外資が1%でも含まれていればPMAになるため、PMDNは一切の外国人の出資が許されていません。法人登記の際もインドネシア国籍の名義人を2名集めることになります。会社を設立してからも日本人が株主となることは許されず、所有者はインドネシア人になります。

上記のような事情があるため、せっかく進出してもインドネシア人にそのまま会社を乗っ取られてしまうリスクもあります。あらかじめ契約書を交わしてリスクをコントロールすることも大切ですが、インドネシア投資の際には信用できるパートナー探しがカギを握っています。

支店形態

一般的な支店形態のメリット

海外進出における一般的な支店形態は、本社と同一の事業体であるため、定款や社内規定はそのまま使えます。さらに本社とのやり取りに関しては社内取引になるため、経理処理や立ち上げ時の事務作業の負担が少ないというメリットもあります。

駐在員事務所とは異なり事業活動に制限はなく、現地法人と同じように営業することが可能です。また海外支店が赤字計上された場合には、本社の利益と相殺して税務申告できます。

インドネシアでは支店形態は難しい

ただしインドネシアでは、支店形態を選択できるのは、銀行業や保険業などの特定の業種に限られています。それ以外の業種では支店を設立することができないため、インドネシアに進出する日本企業や外資企業は、現地法人か駐在員事務所の設立を選択します。

駐在員事務所の形態

インドネシアの駐在員事務所の形態は、外国商事駐在員事務所・外国建設駐在員事務所・外国駐在員事務所の3つです。それぞれ紹介します。

外国商事駐在員事務所(商業省に登録)

外国商事駐在員事務所は貿易の円滑化を目的としていてインドネシア国内でのマーケティング活動、宣伝活動が可能です。市場調査やプロモーション活動のほか、場合によっては契約締結も行うことができます、ただし、入札や契約署名のような営利活動は認められていません。また外国人1名につき、インドネシア人3名の雇用義務があります。

外国建設駐在員事務所(公共事業庁に登録)

外国建設駐在員事務所は建設の準備をする事務所で大企業が進出する場合に認められる形態です。現地での入札や契約業務がメインとなり、入札や建設工事を受注するために公共事業省から建設ライセンスを取得します。

ただし、外国建設駐在員事務所のみの工事受注は認められておらず、必ず現地企業とジョイントベンチャーを設立しなければいけません。条件なども厳しいため、子会社を設立したほうが負担は少ないかもしれません。こちらも技術を有するインドネシア人の雇用義務があります。

外国駐在員事務所(投資調整庁に登録)

外国駐在員事務所は、企業間調整や進出準備を目的としています。日本本社の利益管理やインドネシアの現地法人設立の前段階に設立する事務所です。設立可能な地域も限られており、設立機関や設立場所などにも制限があります。また、代表者はインドネシアに居住しなければいけません。

現地法人設立の主な流れ

インドネシアの法人税
インドネシアでの会社設立の流れを簡単に紹介します。インドネシアで現地法人を設立するためには、日本の登記手続きにあたる「企業登録証明書」の取得が必要です。企業登録証明書が発行された時点で会社登記が完了し、事業を開始できます。ただし事業内容によっては、営業ライセンスを別途取得する必要があるため注意が必要です。

設立の流れ

1.投資登録の申請・取得(PMAの場合)
2.会社名の申請・予約
3.公証人の下で定款の作成
4.ビルのオーナーや管理会社等から所在地証明書を取得
5.納税者番号(NPWP)を税務署から取得
6.銀行口座開設(資本金の払込)
8.会社設立登記

参考サイト:日本貿易振興気候(ジェトロ)「インドネシア 外国企業の会社設立手続き・必要書類」

インドネシアの法人税

インドネシアでの法人は法人所得税の納税義務者となり、キャピタルゲインを含む所得に課税されることになります、また付加価値税(Value added tax-VAT)や奢侈品販売税(Sales tax on luxury goods)が課されます。

法人税率

インドネシアの法人税率は22%です。ただし、株式の40%以上を公開していて、その他の条件を満たす上場会社の場合、3%軽減され実効税率は19%となります。また年間売上高によっても税率が変わります。

年間売上500億ルピアまでの小規模企業の場合は、48億ルピアまでの総売上の中の課税所得に対して、標準法人税率の50%が減額されます。年間売上高48億ルピア以下の企業の場合、ファイナルタックスで毎月の売上高に対して0.5%が課せられます。

地方法人所得税はありません。インドネシアは日本インドネシア租税条約も結ばれていますが適用を受ける際には居住者証明が必要です。インドネシア税務当局により定められたフォーム(DGT-1)に必要事項を記入し、日本の税務当局の承認を受ける必要があるので準備しておきましょう。

納付・申告方法

インドネシアでは、法人所得税の「予納」が必須とされています。前年度の所得税総額から源泉徴収済額を控除した金額を12か月で割り、その金額を毎月予定納税することになります。納付期限は毎月15日・申告期限は毎月20日で、遅延に対しては遅延利息が課せられるため注意が必要です。

確定申告

インドネシアの課税年度は、暦年もしくは会計年度です。年度確定申告は課税年度の終了日から4か月以内に申告・納付しなくてはいけません。なお確定申告書の提出前までに行うことが義務付けられています。

年度確定申告の際に、毎月の予納額と確定年税額の差額を精算します。このとき、予納額よりも確定年税額が上回る場合、つまり納付に不足があった場合には不足額を追加納付することになります。一方、確定申告の際に確定年税額が予納額を下回った場合には、還付を受けることができます。

まとめ

インドネシアは外資優遇制度も整備されている国。これからASEANに進出したいと考えている企業にとっても魅力的でしょう。インドネシアには会社法制度など日本の法制度とは違う点も数多くあります。ネガティブリストの調査や進出形態などはノウハウがある専門家に依頼することをお勧めします。会社登記も複雑でわかりにくいため、代行業者を利用してください。

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hawaiiwater

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