2010年から2017年までの間、台湾の法人税率はアジアの中でも低い17%と設定されていましたが、2018年の税制改正により税率が上がり、20%となりました。

台湾の法人税制度は、「法人住民税」や「法人事業税」も納める日本の法人税制度とは異なり、非常にシンプルです。課税所得が一定の金額に満たない場合は免税となり、満たす場合には課税所得に対して税金が課されます。

この記事では、台湾への進出を検討している方に向け、台湾における法人税の基本的な知識を解説します。法人税の納税対象者や具体的な申告・納税手続き、日台租税取決めや各種優遇措置についてもあわせて確認してください。

台湾の法人税

日本で「法人税」と呼ぶ税金を、台湾では「営利事業所得税」と呼びます。台湾で納める税金は「営利事業所得税」のみで、日本の「法人住民税」や「法人事業税」にあたる税金はありません。

台湾への展開を考える場合に欠かせない、法人税の基本的な内容を解説します。

法人税率

台湾の法人税率は20%で、2018年に原則17%から20%へと上がりました。課税所得額12万台湾元以下の場合は免税対象のため0%、12万台湾元を超える場合は20%、税額上限は12万台湾元を超えた課税所得の半額です。

また、台湾は「移転価格税制」を導入しています。これは、海外の関連企業との取引価格設定が、通常よりも納税の減少を生じさせると税務機関が判断した場合、通常の取引価格で行われたものとみなして所得を計算し、課税する制度です。

「最低税負担(ミニマム・タックス)制度」も導入され、免税所得額も考慮して別途計算される「通常税額」が、上記の方法で計算した税額よりも高い場合、差額を追加納税することになりました。

納税対象者

台湾居住者や、現地で登記した台湾法人、中央管理地などを「台湾」として登録した法人が納税対象者です。ここでの居住者とは、1課税年度内の台湾滞在が183日以上の場合を指します。

該当する法人を管理・支配する国を居住地とする「管理支配地主義」の導入が立法院で可決されたものの、施行日は未定です。

居住者の課税範囲

全世界所得が対象です。台湾で稼いだ所得だけでなく、他の国で稼いだ所得も含め、すべての所得に対して課税する方式です。

課税年度

台湾では1月1日から12月31日の暦年が基本です。しかし、任意の事業年度を税務当局へ申請し承認を得れば、課税年度を自由に設定できます。

税金の時効は本来の申告期限から5年ですが、悪質な不正があるときは7年に延長されます。

法人税の申告・納付手続き

台湾の会社に課せられる法人税をいつまでに、どこへ申告し納税すべきかを説明します。また、台湾で販売される商品・サービスおよび輸入にかかる「法人税以外の税」も知っておきましょう。

申告納付期限

法人税は課税年度の終了後、5か月目にあたる月に申告し納付しなければならず、期限の延長は認められません。たとえば決算日が12月31日の会社の場合は5月1~31日まで、3月31日が決算日の場合には8月1~31日までに青色申告・納税をします。なお台湾法人の設立後2年目以降は、前年度の営利事業所得税の2分の1を課税年度の9か月目までに予定納税が必要です。

台湾法人であれば、内資・外資を問わず期限は同じです。また、台湾では1月1日から12月31日の暦年が基本であるものの、課税年度は日本と同じく任意で設定ができます。

中間納付

台湾では申告と中間納付を営利事業者に義務付けており、課税年度の期首から9か月目にあたる月、原則9月1~30日までの間に行います。決算が3月の企業の場合、3月31日の決算日から9か月後の12月1~31日の間に中間納付をしなくてはなりません。

中間納付での納付税額は、前年度の確定申告で納めた税額の2分の1程度が原則です。ただし、青色申告事業者や公認会計士の監査を受ける事業者は、所得税法により計算した「上半期6か月分の営業事業所得額×法定税率(20%)」で算出した金額を納めます。

中間納付の納め方は、中間納付税額申告書を作成し、中間納付税額領収書と税額控除証明書類を添え、管轄の税務機関へ申告します。

その他の税「付加価値型営業税」

付加価値税とは付加価値に対して徴収するもので、販売する商品・サービス・輸入品に対して課税します。日本の消費税に近い税であり、「付加価値型および非付加価値型営業税法」にもとづく課税が義務付けられています。

税率は5%で2か月ごと(営業税が多額の場合は毎月も可)に行い、課税対象は「総所得-総設備資本と資本的支出以外の支出を控除した残高」です。奇数月の15日までに、前月と前々月の2か月分を所定の申告書を使って申告します。

営業税の課税対象の事業者は、販売する相手が営業者の場合、「統一発票」という公式のインボイスの発行が必要です。

日台租税協定と各種優遇措置

台湾と日本の民間機関の間で交わされた「日台租税取決め」により、条件を満たす取引は申請すると免税される可能性があります。免税の許可を得るには時間がかかるため、早めに準備し申請しましょう。

日台租税取決めによる免税

日台民間租税取決め第24条により、相互協議手続きを行うと免税の申請ができます。ただし、免税許可証の発行までには4~6か月程度かかるため、早めの手続きが必要です。

これは台湾と日本の両方による所得税の二重課税や脱税を避ける目的があり、10%の優遇税率の適用が可能です。ただし、民間機関の間での取決めのため、台湾と日本の二国間で締結した条約や協定などではありません。

・申請条件

申請条件は以下の通りです。

  • 日本の居住法人であり、条約上の受益者であること。
  • 台湾に恒久施設(PE)を持たないこと。

・事業所得の免税

台湾にPEがない場合、得た事業所得は免税対象になります。一方、PEがある場合は課税される可能性が高いです。PEには、支店、事務所、工場、6か月を超える工事請負、連続12か月内に183日超のサービス提供などが含まれます。

・配当・利子・ロイヤリティの免税

台湾の所得税法では、非居住者に対し配当の源泉税率は21%、利子およびロイヤリティは20%と定めています。しかし日台租税協定により届出をすると、10%の優遇税率の適用が可能です。

その他の優遇措置

・産業創新条例

特定の研究開発をする企業が対象で、一般の研究開発、スマートテクノロジーや5G事業・設備など、それぞれの投資支出に対し営業所得税からの控除を受けられます。

・バイオ・新薬発展条例

2007年に施行された条例で、台湾経済部の認定を受けた企業が対象です。研究開発や人材育成にかかった費用の一部(上限25%)を営利事業所得税から控除され、5年間の繰り越しができます。

ただし、各事業年度の税額控除前所得税額の半分が上限です。

・自由貿易港区設置管理条例

外国法人やその支店などが自由貿易港区で貯蔵、または簡易加工した商品を輸出し販売したケースが対象です。台湾源泉所得に対する営利事業所得税の免税のほか、関税・営業税・物品税の免除を受けられます。

まとめ

台湾の法人税は、名称は違っても日本の制度に似ているところが多く、課税年度の設定や申告・納税の期間などが理解しやすいです。台湾への進出の際には、日台租税取決めによる免税の申請や、各条例にもとづいた優遇措置の利用も検討してみましょう。

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