台湾で会社設立するには、どのような手続きや費用が発生するのでしょうか。

台湾への主な進出形態は、「現地法人」「支店」「工事事務所」「連絡事務所」「代表事務所」があります。この記事では、進出形態ごとのメリット・デメリットに加えて、日本企業の一般的な進出形態である「現地法人設立の流れ」をステップごとに説明します。

さらに、会社を設立するには、最低資本金や登記費用以外にも必要な費用が想定されます。実際に考慮すべき項目や従業員の給料やオフィス賃料など、具体的な金額についてまとめました。

台湾での進出形態

台湾で会社設立する形態は主に5つあり、営業活動を行う「現地法人」「支店」「工事事務所」、営業活動を行わない「連絡事務所」「代表者事務所」です。

それぞれのメリットとデメリットを解説します。

現地法人

現地法人は2015年11月30日に有限責任組合法により、これまでの会社形態に加えて有限責任組合も選択可能になりました。法人格を持ち、日本国内の本社から独立した株式会社・有限会社を設立できる点がメリットです。

台湾進出する日本企業の多くが、現地法人の形態を取っています。デメリットは維持コストの高さと、損金が出ても日本国内の本社へ算入できない点です。

支店

日本国内にある本社と同じ法人の扱いです。あくまでも日本法人の支店のため、台湾での法人格は持たず、原則日本国内の本社と同じ事業に限られます。

現地法人の設立が一般的ですが、たとえば金融・建設・商社といった特殊な業種は支店を選ぶ場合があります。メリットは日本国内の本社と損金算入できる点で、デメリットは維持コストの高さ、支店設立のライセンスの取得がやや難しいことです。

工事事務所

一時的な販売やサービス提供なども可能な場合があり、工事に限定した内容だけではありません。工事だけに限らず、一定期間、台湾でサービスを提供するときに税金を納める手段です。

法人登記は不要で、メリットは維持コストが低いこと、デメリットはライセンス取得が難しい点です。

連絡事務所・代表者事務所(営業活動を行わない)

・連絡事務所

営業活動を行わない形態で、法人格はありません。連絡事務所の役割は日本国内にある本社との連絡業務のみであり、法律行為は駐在員個人の名義で行います。

・代表者事務所(駐在員事務所)

一方、代表者事務所の役割は、日本国内の本社に代わって法律行為のみを行い、営業活動は行いません。具体的には、台湾での第三者との契約交渉や締結、訴訟や非訟事件についての代理行為だけが対象となります。

銀行や保険業など一部の業種では、主管となる機関の許可がないと行えません。連絡事務所と代表者事務所のメリットは、どちらも設立維持コストが低いこと、デメリットは営業活動を行えないため、維持にあたっては本社が資金を用意しなくてはならないことです。

会社設立(法人設立)手続きの流れ

台湾で会社設立する手続きの中から、現地法人を設立する際の流れをステップごとに解説します。

①台湾法人の会社名称と営業項目の事前審査

同名の社名は使えないため、使いたい中国語の会社名が重複していないか、経済部中部弁公室で事前審査を受けます。もし重複があった場合の変更に備えて、5つ程度の候補を用意しましょう。ただし、これは自由に社名を選べる現地法人のみで、支店や駐在員事務所の場合は、日本国内の本社と同じ社名の使用が必須です。

また台湾における会社名称は、台湾の漢字(繁体字)で表記することが定められており、会社名の冒頭には日本企業の場合であれば「日商」、米国企業であれば「美商」など、本社所在地の国・地域名が入ります。

営業項目の審査では、「華僑・外国人投資のネガティブ・リスト」内の「禁止事業」と「制限事業」に属さなければ原則として認可されます。なお、既に登録されている会社と営業項目が重複する場合には、申請する会社名が既登録のものと類似していないことが必要です。

②外国人投資申請(FIA申請)

外国人や外国企業の法人設立では、経済部投資審議委員会へ「外国人投資」の申請をし、許可を得る必要があります。安全保障や経済政策などの理由から投資項目には制限があるため、外国人が投資可能な分野かどうか、投資内容が審査されます。

FIAとはForeign Investment Approvalの略で、外国法人または個人で投資し設立された現地法人のことを「FIA法人」と呼びます。法人設立にあたっては、居住者以外でも登記できるため、現地人を取締役に置く必要はありません。株式会社は取締役3名と監査役1名、有限会社は取締役1名が必要です。

申請の必要書類は、外資投資申請書・申請者身分証明・代理人委任状・代理人身分証明・会社名及び営業項目調査申請表です。

③銀行口座開設・資本金送金・出資金審査

②の外国人登記申請が通ったあと、「会社名+準備室」などの名称で銀行口座を開設します。この際、実際に台湾へ代表取締役(責任者)が出向く必要があるので、責任者が台湾との行き来がしやすいかどうかも考慮してください。

法人設立の公文書を受け取ったら、その内容に従って申請した金額の資本金を日本から送金しましょう。銀行にて公文書正本に資本金金額を承認したという記載がされた後、公文書正本と送金受領書を添付し、再び政府の資本金審査を受けます。

④会社設立登記の申請

出資金が許可されると会社登記へと進み、「準備室」がついた口座の名称を、正式な会社名へ変更します。代理人が社名変更を行う場合は委任状が必要で、弁護士または公認会計士のみ、代理人として申請が可能です。

⑤管轄の税務署で税籍登記(営業登記)

営業開始に向けて必要書類を各地の国税局へ申請し、税籍番号と営業項目の登録を行います。登録が完了すると、現地法人は統一発票(台湾のインボイス制度に基づいた公的なインボイス)での売上計上が可能になります。

⑥英文社名審査と貿易登記申請

商品の輸出入を行う場合には、会社の英語名称を登録し、貿易資格を得るための申請をしましょう。オンライン申請先は、経済部国際貿易局です。

会社設立(法人設立)・登記費用

台湾で会社を設立するにあたり、必要な費用を5つ説明します。

最低資本金

会社や法人設立時に必要な最低資本金の規定はなくなったものの、実際には就労許可の取得のために準備をする必要があります。新しく設立する会社の責任者の就労ビザの取得には50万台湾元(日本円で約230万円)が必要となるため、最低でもその金額を目安に用意しましょう。

登記費用

オンラインでの会社名提出や会社登記、証明書発行費用などを合計して3,800台湾元(日本円で約18,000円)程度が目安です。設立代行業者へ依頼する場合、サポート内容にもよりますが、3万~6万台湾元(日本円で約14万~28万円)程度プラスでかかります。

ビザ取得費用

日本で取得する場合、ビザ取得費用は7,000円程度です。初めて就労許可の延長を受けるには、過去3年間の平均、または直近1年の売上が300万台湾元以上(約1,400万円)であることが必要です。

オフィス賃貸料

台湾でのオフィス契約は3~5年が一般的で、首都・台北市の信義区や中正区にはレンタルオフィスが集まっています。費用を抑えるために、シェアオフィスやバーチャルオフィスを利用する方法もあります。

従業員の給料

現在、新卒初任給は日本の約半分の10万円程度で、台湾で現地人を雇用するには1人につき給料12万5千円程度以上が必要です。これは、大学新卒・事務職の月給と同じくらいの金額となります。

最低賃金は、2024年から月給約12万6,300円、時給約841円への引き上げが決まっています。加えて台湾では、旧正月など節句の時期にご祝儀(ボーナス)を支給する風習があり、その支払いも必要です。

まとめ

台湾での会社設立は、営業活動を行う場合には「現地法人」「支店」「工事事務所」、営業活動を行わない場合は「連絡事務所」「代表者事務所」という選択肢があります。日本企業の進出形態で最もよく選ばれる「現地法人」の設立であれば、事前審査を含む6つの手続きを行うことになります。

また進出費用は、「最低資本金」「登記費用」「ビザ取得費用」「従業員の給料」などが必要です。どれかひとつでも欠けるとスムーズな会社設立が難しくなるので、不足なく準備を進めましょう。

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