急速な発展によって世界からも注目されるASEAN諸国。その中でもベトナムは日本が多く投資している国のひとつです。ここまでベトナム経済が発展してきた理由を紹介します。

ベトナム経済の変遷

ベトナムの歴史

ベトナムは外国からの侵略や戦争、紛争が長く続いた歴史を持ちます。それは第二次世界大戦後にも続き、フランスやアメリカという大国との戦いを強いられました。

ベトナムは南北に分断されたまま、アメリカと戦い続け、アメリカ軍が撤退したのは1973年のこと。さらに南北ベトナムが統一されて、ベトナム社会主義共和国が成立したのは1976年のことです。その後も紛争が続いたため、国家として発展していく方向に進めたのは1980年代に入ってからです。

きっかけとなったドイモイ政策

ベトナム経済の転換期となったのは1986年のドイモイ(刷新)政策です。とくに初期のドイモイ政策は国家資本主義的な方向が目立ちました。国内市場は国有企業及び外国資本に開放されたものの、民間セクターに対する新規参入の規制は緩和されませんでした。

これは開発政策として、外国資本の技術を活用しながら国有企業の生産能力や生産性を上昇させる目的でした。そのため外資資本の受け入れも国有企業との合弁が主なものです。1990年になると酷な民間資本に対する経済制度の自由化が開始されたものの、90年代末までは厳しい規制が続きました。

ベトナム経済発展の転換点

国家主導の市場経済

ベトナムの成長モデルは共産党一党独裁を維持しながら市場経済化を続けるもの。ミニ中国型の経済と表現されることもあります。ODA を利用してインフラを整備するとともに外資を導入して、輸出主導で工業化・経済発展を目指すという意味では中国に似ている部分もあるでしょう。

しかし、ベトナムは2000年前後から民間資本の自由化を本格的に推進、規制緩和をおこない市場経済型の発展が進みます。従来は民間資本の市場への新規参入には政府の許可が必要で煩雑な手続きが求められました。新制度では新規参入にかかる時間や費用が劇的に少なくなり、起業が促進されています。また輸出入の手続きも簡素化されました。

この政策路線がベトナムの2000年以降の成長につながっています。ベトナムは1995年にASEAN加盟、続いて1998年にはAPEC(アジア太平洋経済協力機構)、2007年にはWTO(世界貿易機関)に加盟しています。

ベトナムの経済に対する政府の関与は続くものの、ASEANの貿易自由協定やWTO加盟協定などによって経済制度の自由化や透明化が求められていたため、過剰な介入は抑制されるようになりました。

WTO正式加盟で加速する国際化

WTO加盟協定は国際条約で求められる経済制度(法律システム)の透明性、公平性及び一貫性を改善するため、政府の介入を制限しています。その結果、ベトナムでは非国営企業の割合が増加しています。このような非国営企業が後にベトナム経済を支えていくことになりました。

ベトナムの中央集権から、市場原理へのシフトや国内外への規制緩和はベトナム国内の産業や競争力を向上させました。また外国直接投資の流入が拡大することによって経済成長を成し遂げたのです。このようにベトナム経済は発展モデルを変化させることで成長を続けてきました。

存在感を高めるベトナム経済

存在感を高めるベトナム経済

外資系企業が次々に参入

ベトナムは約9,700万人の人口があり、人件費の安さや基礎的な学力の高さから労働コストを下げる目的で多くの外資企業が参入しています。主に軽工業や電機関連の組み立て作業など労働集約的な労働の担い手の供給にベトナムは貢献していました。

もともと電力や交通網などインフラが整っているとは言えない環境に合ったベトナムも、ODAによって改善されてきています。ベトナムがWTOに加盟して投資関連法制度が整備されると、アメリカのインテルや韓国のサムスンといった企業もベトナムに進出するようになりました。とくに韓国企業は、地理的なメリットや企業文化面での親和性からベトナムへの関心が高まり、ベトナム進出が活発化しています。

また今までは中国が世界の工場として機能してきたものの、貿易摩擦や政治的な理由によって中国への一極集中を避けるような動きが見られます。このいわゆるチャイナプラスワンの投資先としてもベトナムは有力です。

輸出拠点としてのベトナム

ベトナムはASEANのなかの輸出拠点として存在感を増しています。2010年代に急激に輸出が増加しており、2016年にはタイを抜きインドシナ半島で最大となりました。さらに2021年には、新型コロナウイルスの影響を受けながらも過去最高の輸出額を更新しています。

これは2010年代に大手の外資企業が大規模な製造拠点をベトナムに建設したことの影響が大きいでしょう。また中小企業のベトナム進出も増加し、これからの成長も期待されています。

まとめ

ベトナムは経済発展とともに所得水準も向上しています。自動車販売台数は3年連続で40万台を超え、個人消費が活発化していることがわかります。現地市場が抱えているポテンシャルも大きく、安価な労働力、生産拠点としても魅力的な国です。

今までは日本からベトナムへの投資というと大企業が中心でした。しかし、現在中小企業でベトナム進出を目指す企業も増加しています。今後もベトナム経済は外資企業進出をてこにして堅調な推移が予想されるでしょう。中長期的には産業構造が高付加価値化することも想定されることも考えられるため、教育や職業訓練の拡充、インフラ整備などが求められます。

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