人口増加が続き、今後も経済の活性化が見込まれるフィリピンは、将来的に経済規模が世界的にもかなり上位に入ると予測されています。

フィリピンでは、海外から進出してきた外国企業に対する優遇制度が設定されています。人口ボーナスが続くことが予測され、豊富な労働力が得られる点も大きなメリットの一つでしょう。

ただし、フィリピンには外国企業に対する制限事項を設定したネガティブリストがあるため、一定の業種などの進出に関する規制がある点に注意しなければなりません。

7,641もの島々からなる「フィリピン」

フィリピンには、外国企業に進出先として選択されるさまざまな特徴があります。人口や言語などの基礎的な情報、産業や進出実績といった理由から、魅力的な海外進出先として検討できるでしょう。

フィリピンの基礎情報

フィリピンは、スペインの植民地時代、アメリカの統治時代を経て独立した東南アジアの国です。フィリピンの国土は面積が298,170平方メートルと日本の80%ほどの面積、7,641もの島々が集まって国を形成しています。

人口は2020年の時点で1億903万5,343人、現在急速な発展を続けているアジアトップクラスの経済成長率を誇る国として、日本企業の海外進出にも最適な国の一つと判断できます。フィリピン国内では多数の言語が使われていますが、公用語はフィリピン語と英語です。

英語で事業を行えることからも、フィリピンへの進出の敷居は低くなっています。フィリピンはASEANでは唯一のキリスト教国のため、海外進出の際は、宗教による日本との文化の違いに注意しなければなりません。

主要産業・貿易

フィリピン経済の主要産業は、GDPの約60%を占めているコールセンター業務などの「ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)産業」(2021年)、GDPの約30%を占める「鉱工業」(2021年)、GDPの約10%を占める「農林水産業」(2021年)などです。主な輸出品目は、半導体を中心とした電子・電気機器、輸送用機器。輸入品目は化学製品などの半加工品を中心とした原料、通信・電子機器などの資本財、燃料、消費財となっています。

これらの産業から、電子機器などの製造業が盛んな国だとわかります。2022年のフィリピンの貿易実績では、輸出相手国の1位が「米国15.7%」、2位は「日本14.1%」、3位は「中国13.9%」でした。

同様に、輸入相手国は1位中国(20.6%)、2位インドネシア(9.6%)、3位日本(9.0%)で、日本は輸出入どちらにも重要な相手国としてランクインしています。近年では中国との関係改善を背景に、経済連携が結ばれ、インフラに関する経済支援などを受けてさらなる発展が考えられるでしょう。

進出企業

日本からの進出企業の約半数は「製造業」が占め、自動車・エレクトロニクスの製造拠点として、多くの進出企業が存在している国といえます。

日本企業のフィリピン進出はコロナ禍の影響を受けて若干減少していますが、2022年10 月調査の「日本企業が進出している国・地域ランキング」では、フィリピンは14位に入っています。世界の半導体産業でも重要な役割を担っており、半導体組み立て・検査などの主要拠点としても重要視されている、製造業の有力な進出先に挙げられるでしょう。

格差社会

現在のフィリピンには中間層が少なく、一部の富裕層以外は多くの貧困層で占められています。格差社会が広がっているフィリピンでは、首都マニラ周辺は平均世帯所得が全国平均の2倍近くと高い水準にある反面、首都から離れたエリアでは世帯の平均所得の半分程度しかありません。

フィリピン統計局の発表によると2021年には18.1%の貧困率、350万世帯(2,000万人)が貧困に陥っている状態でもあり、企業や産業が不足しているため、人口に対して働き口が足りない国という特徴があります。労働人口の多いフィリピンでは、約1,000万人、国民の10人に1人が海外で暮らして働いている事実もあり、世界最大の労働力輸出国とも呼ばれています。

フィリピン進出の「理由・メリット」

今後の経済成長が期待でき、労働力が豊富だとされているのがフィリピンです。外国企業の優遇措置が充実しているなど、海外進出先として選ばれるさまざまなメリットがあります。

経済特区

経済発展につながる外国企業の進出に対する優遇措置には、フィリピンの経済区庁(PEZA)が管理する経済特区が存在します。日本から進出する場合には他の多くの企業同様に、「エコゾーン」と呼ばれる経済特区に現地法人の設立などの進出形態で行うと、税制などさまざまなメリットが得られます。

優遇制度の利用には、PEZAや投資委員会(BOI)などに申請を行わなければなりません。進出形態などの条件を満たして申請を行い、承認されると優遇措置が受けられます。

優遇措置には、主に以下の内容があります。

優遇措置の内容(一部抜粋)

  • 4~8年間(事業内容により異なる)の法人税免除(ITH)
  • ITHの期間終了後に適用される特別税5%の適用
  • 機械設備、原材料などの輸入にかかる関税の免除
  • 付加価値税の免除など

労働人口・消費市場

フィリピンは人口増加が続き、それに伴う消費市場の拡大が進んでいる国です。人口は2023年現在、日本の次に多い世界第12位、国民の平均年齢が26歳で、人件費が抑えられる若年層が多い点も会社設立時の大きなメリットです。

フィリピンの人口ボーナスは、2050年頃までピークが続くと予測されています。人口ボーナスとは、総人口に対する15~64歳の人口割合のことで、割合が高いほど労働力が豊富になり個人消費も増加します。人口ボーナスのピークが長く続き、さらに高齢者の割合が少ないため、社会保障にコストがかからず今後の経済成長にもつながるでしょう。

英語でビジネスを行える

英語が公用語の一つとなっているフィリピンでは、英語で事業を行うことが可能です。大学卒のフィリピン人は英語を話せる人が多く、ビジネス英語が使える従業員を探す際に、人材の確保がしやすい点もメリットです。

フィリピンはビジネス英会話力が世界一になった実績もあるほど、英語力が高い国でもあります。質の高い英語力が身に付く国として、英語習得の際の留学先としても注目されています。フィリピン人の中には、英語力の高さから外国人観光客向けの飲食・サービス業、英語力が必要なコールセンター業務、英語を教えるオンライン英会話講師として活躍している人も少なくありません。

ただし、現地の労働法が労働者に有利な内容になっていることから、労務トラブルが起こりやすい点には注意が必要です。フィリピン人の文化は日本よりも時間にルーズなどの特徴もあり、現地で採用した人材とのトラブルを防止するには、現地事情に詳しい専門家を人事に雇う必要があります。

期待される経済成長

2023年4月のフィリピン開発予算調整委員会(DBCC)の発表によると、フィリピン経済は2028 年まで高い経済成長率を維持することが期待されています。2023年から2028年までの目標経済成長率は、6.0%~8.0%の範囲に設定されており、内需を支える要因として、労働者の雇用環境改善や観光業関連産業の回復が続くことが挙げられます。

また、あわせて2023年の物価上昇率の予測値が上方修正され、これまでの2.5~4.5%から5.0%~7.0%に引き上げられました。2024年から2028年までの予測値は2.0~4.0%と発表されており、これは食品価格やエネルギー価格の値上がり、交通・輸送費の上昇に起因しています。そのためフィリピン政府は、インフレ対策や投資改革を進める計画を立てています。

フィリピンは、引き続きASEAN+3地域内での成長リーダーとしての地位を維持し続け、経済の多様化や投資改革を進めながら、2028年まで持続可能な経済成長を達成する見通しです。安定的な経済成長率を維持するフィリピンは、多くの投資家にとってビジネスに適した環境が整っているため、今後ますます注目されることが予想されます。

フィリピン進出の「デメリット」

フィリピン進出には、気を付けなければならないデメリットもあります。事業によっては外貨規制に該当する場合があり、いまだに整備が遅れているインフラの問題などには注意しなければなりません。

外貨規制

フィリピンでは業種などによって、投資が規制・禁止されている外国資本があります。外資規制が定められている業種を公開しているのが「ネガティブリスト」です。

フィリピン国内で外国人の投資と所有が制限される業種・職種は「ネガティブリストA」、安全保障、防衛、公衆衛生などを原因に外国人の投資・所有が制限される業種・職種が「ネガティブリストB」で公開されているため、これらに該当する業種や事業の進出は行えません。また、外国人による資本参入の規制や土地の所有規制などの制限もあります。

業種によって割合は異なりますが、土地の所有はフィリピン国籍を持つ個人、もしくはフィリピン人が60%以上の資本を保有している企業にしか認められていないため、外国企業が土地を所有して事業展開をすることはできません。ところが、この外貨規制緩和に関連する法律の改正が決まり、2023年4月4日からは電気通信、航空、鉄道などの公共サービスで完全な外国所有が認められることになりました。

送配電、上下水道、石油などの公共サービスは、外国資本の上限が40%までと変更はありません。

インフラ整備

フィリピンは、近隣の国に比べてもインフラの整備が遅れている問題があります。電力の質や供給が不安定で電力インフラが整備されていない点から、ビジネス上のリスクが生じることも懸念されます。

企業は電力が止まった状況を想定して、電力の供給をサポートする自家発電用のディーゼル発電など対策を講じる必要があり、多くの投資を行わなければなりません。ただし、2022年から始まったマルコス政権も、ドゥテルテ前政権と同様にインフラ整備・開発には力を入れています。

陸海空運輸、水資源、エネルギー、社会インフラなどのインフラ整備を計画し、日本からの資金・技術支援を受けてフィリピン初の地下鉄工事も進められています。

まとめ

フィリピンは、東南アジアの中でも急速に経済成長を続けている国です。外国企業を誘致するために設けられている経済特区、豊富な人口と消費市場、英語が公用語であることなどのメリットから、海外進出先として魅力的な国の一つといえます。

フィリピンでは、近年ネガティブリストなどで公表されている外国企業への制限が緩和され、より海外進出しやすい国へと変わってきています。人件費を抑えられることから、製造拠点としても人気が上がっているフィリピンなら、日本企業の進出、スタートアップを成功につなげられるでしょう。

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