オープンイノベーションの波が日本にもやってきています。しかし産学連携なども実施しているものの、日本ではオープンイノベーションがなかなか進まないのが現状です。世界一のオープンイノベーション大国スウェーデンの取り組みや事例を紹介します。

産業構造の変化とオープンイノベーション

情報化社会となり、今までの産業構造は変革を迫られています。人口は増加を続け、情報が急スピードで世界中を駆け巡っています。その中で企業の殻に閉じこもるのではなく、自社技術を活かして外部からアイディアを集めたり、他企業とのコラボをしたり、といった外から変革を取り込むような取り組みをスタートしている企業も少なくありません。

今までイノベーションといえば、アメリカのシリコンバレーが代名詞として挙げられてきました。しかし、今はオープンイノベーション大国としてスウェーデンが台頭しています。オープンイノベーションのための環境がどれだけ整っているかを指標で示すGlobal Innovation Index 2019では、スウェーデンはアメリカを押さえて世界2位にランクインしています。1位はスイス、日本は15位という結果です。
参考:Global Innovation Index 2019

スウェーデンは社会問題を解決するための官民連携の場としてもオープンイノベーションを活用しています。社会にオープンイノベーションが息づく文化はこれから高齢化が進む日本にとっても参考になるでしょう。

フューチャーセンターという事例から見るオープンイノベーション

フューチャーセンターという事例から見るオープンイノベーション
オープンイノベーションの舞台では国籍や職業、業種などそれぞれが違う立場からビジネスモデルやソリューションの策定をおこないます。そのためにとくに大切となるのがオープンイノベーションをおこなうための「場」です。

フューチャーセンターはスウェーデンの知的資本経営の研究者であるレイフ・エドビンソン氏によって、未来志向の対話の場として提唱されました。イノベーションには未来の一部を取り込むことが重要だという考えから作られ、企業や政府、自治体などがオープンイノベーションをおこなう場として機能します。

フューチャーセンターで扱うテーマは多岐にわたります。行政分野の政策立案から民間分野では事業戦略策定や製品開発など、また所属組織や立場が違う人が普段の立場を離れて対話をおこなってアイディアを共有します。

日本でもフューチャーセンターをおく企業は少なくありません。2007年には富士ゼロックス、2009年に東京海上日動システムズがフューチャーセンターを開設しました。また企業の枠を超えた企業間フューチャーセンターなどを合同で設立した事例もあります。

リビングラボの取り組みで変わる世界

スウェーデンでオープンイノベーションが進んだ理由としては、優れた教育システムの存在もあるでしょう。幼少期から自立性や主体性、創造性を引き出す教育がおこなわれてきたため、お互いが主体的に尊重し合う風土が自然と根付いています。クオリティオブライフへの関心も高く、ライフスタイルに対する意識、関心が高いのがスウェーデンの国民性です。

スウェーデンの取り組みとしておこなわれているリビングラボは、消費者や市民参加型の新しい技術、サービスを共創する拠点です。まさに生活空間(Living)が実験室(Lab)となる取り組みといえるでしょう。

リビングラボでメインといえるのは消費者やユーザーです。企画から開発、評価、テスト、改善に至るまで全てのプロセスに消費者が参加するのがリビングラボの特徴。サービスの開発を目指す企業のほか、地域のソリューションを目指す自治体やNPO法人、大学等研究機関がリビングラボを利用しています。

リビングラボがソリューションとして機能した事例

リビングラボという概念はもともとアメリカで生まれたものですが、アメリカよりもヨーロッパにおいて浸透して、2000年代になってからはフィンランドやスウェーデンなどで急速に発達しました。

スウェーデンは環境技術国家戦略のもと、イノベーション庁を含んだ省庁でさまざまなイノベーション事業がおこなわれています。そのひとつがリビングラボ事業です。

今回紹介するのは土地開発ソリューションをリビングラボが活用したものです。この事例の対象地区は低所得者層が多く、老朽化が進んでいて建て替えが必要な地域でした。

住居の建て替えはエネルギー効率に関わるEUの指令を伴っており、技術的なイノベーションが必要です。また、建て替えにはコストがかかってしまうため、住民への負担が懸念されます。そこで、低所得者向けの資金援助制度や、所得を補う雇用制度を新規に創設するという社会イノベーションが創設されました。これは住民からの意見を集めることで地域の問題を解決した事例です。当事者意識を持って社会問題に取り組む姿勢が良い結果をもたらしたといえるでしょう。

まとめ

スウェーデンのオープンイノベーションは住居やライフスタイルの文化として深く根付いています。日本でも地方自治体の情報開示や市民の参加が求められる声が上がっています。スウェーデンでおこなわれた取り組みは将来の日本においても参考になるでしょう。またフューチャーセンターやリビングラボといった事例は、企業にとっても大きなビジネスチャンスになると考えられます。

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