ドイツの法人税にはどのような税金があり、税金をどのくらい納付しなければならないのでしょう。ドイツで事業を行っている法人は、課税対象となる所得額に応じた法人税を納付する必要があります。

ドイツの法人税は、全国一律の連邦税、地方により税率が定められている地方税で構成されています。法人税の情報や申請・納付の手続き、法人税の軽減に活用できる優遇措置・二国間条約など、進出の際に役立つ税金情報をまとめました。

ドイツの法人税

ドイツでは、企業の所得税となる法人税、連帯付加税、営業税といった税金を納付しなければなりません。法人税と連帯付加税には法人の所得により全国一律の税率が課せられますが、営業税だけは自治体によって税率が異なっています。

税率

連邦税である法人税と連帯付加税は、全国一律の固定税率です。法人税と連帯付加税を合わせ、課税対象額の15.825%と定められています。営業税は税率が自治体によって異なる地方税で、約7%~17%と幅があり、これらを合計した2021年の平均実効税率は約30%となっています。

法人税

法人税は、ドイツの国全体で一律に課される連邦税です。ドイツ国内に拠点がある有限会社や株式会社、外国籍企業の支店などといった恒久的施設(PE)は、課税対象となる年間所得に対して課される法人税を納付しなければなりません。

これまでは、パートナーシップ形態の会社(合名会社、合資会社など)は法人ではないとみなされていました。そのため、会社の課税対象額は「各出資者の所得」として出資比率ごとに割り当てられ、個人に税金がかされていたのです。しかし、法人税改正法が適用になった2022年1月からは、パートナーシップでも法人税課税の選択が可能となっています。

税法上は「法人」としてみなされ法人税が課されるため、法人課税を選択した場合は、個人に課される累進課税の源泉所得の場合よりも税額を低く抑えられるでしょう。源泉所得税率は14~29.8%ですが、法人税率は所得額に関わらず固定税率の15%が課税されます。

連帯付加税

連帯付加税は、東ドイツ・西ドイツの統一に関連して旧東ドイツの復興支援を目的とする税金です。課税額は法人税額の5.5%(課税対象額の0.825%)となっています。

2021年1月以降、パートナーシップには課税所得に応じて免税~最大5.5%までの税額が課されます。

営業税

ドイツ国内で事業を行う法人やパートナーシップなどに対して課税される税金が、営業税です。営業税は地方税のため地域ごとに課税額が異なり、地域の税率を確認しなければなりません。

営業税率の基本税率は3.5%です。この3.5%の税率に対し、各自治体が定める賦課率をかけて計算します。各自治体の税率はおおよそ295~580%で、地方よりも都市部で高く設定される傾向にあります。なお、法律によって禁止されているため、賦課率を200%未満にはできません。

営業税額の計算例

2022年度のベルリン市の場合:賦課率410%
課税対象所得が100万ユーロの法人営業税額は、次のようになります。
100万ユーロ×基本税率3.5%×賦課率410%=14万3,500ユーロ

法人税の納付・申告手続き

法人税の納付・申告手続きは、事業年度ごとに行われます。法人税課税年度の翌年の申告納付期限までに申告書を作成し、納付しなければなりません。

税金を納める法人

法人所得税を納める必要があるのは、ドイツの居住者。つまり、ドイツ国内に登記済みの事務所もしくは経営管理している場所など恒久的施設(PE)がある法人の場合です。

ドイツに所在地を置いている、もしくは経営管理地がある法人は、全世界所得が課税所得の対象となります。国外支店の損益も課税所得の対象となるため、ドイツにある本店の損益と合算した所得にかかる法人税を申告・納付しなければなりません。

納税の手順

法人税の課税年度は暦年です。法人の会計年度が暦年と異なるケースでは、税務署への申請が必要です。申告後は、納税通知に基づいて四半期ごとに4回に分けて中間納付を行わなければなりません。

法人所得税の時効は、申告書の提出をした日の属する年の12月31日より4年間です。租税回避が認められる場合は、最長15年まで事項が延長されます。

申告・納付期限

申告期限は、課税年度の翌年の7月末です。税理士等が代理で申告する場合は、要件を満たせば翌々年の2月末までに申告期限を延長することができます。

申告後、納税通知書を受領してから1か月以内に納税しなければなりません。

二国間租税条約による二重課税の回避


日本とドイツの二国間租税条約では、配当課税・利子・ロイヤリティに関する取り決めを定めています。

二国間租税条約

二国間租税条約とは、日本とそれ以外の国に拠点を構えている法人の二重課税を防ぐことを目的に、二国の間で結ばれる条約です。二重課税を防止するため、ドイツと日本の間には、1966年4月に租税条約が締結されました。

その後修正を重ね、2016年10月には新協定が発効しました。二重課税とは、同一の納税者・取引・事実に対する租税が日本とドイツの両方で行われ、二国両方から二重に課税されている状態です。日本の税制では、基本的に租税条約の適用が優先されます。

配当課税

配当課税は、法人の本社がある国において、利益配当金に対して課税される税金です。二国間租税条約が結ばれている場合には、配当金にかかる税額が大幅に軽減されるケースが多いです。ドイツでは、配当課税は原則として15%の上限を設けています。

持ち株割合や保有期間などの一定の条件を満たしていると、免税・税率の軽減が適用されます。持ち株割合が25%以上・保有期間が18か月以上では「免税」、持ち株割合が10%以上・保有期間が6か月以上では「5%」に軽減されますが、それ以下の場合は上限の「15%」です。

利子

利子税では、一定の条件を満たした場合に、日本とドイツの両方で原則免税が適用されます。

ロイヤリティ

著作権・特許権・商標権・ノウハウ・意匠などのロイヤリティにかかる税金も、利子税同様、一定の条件を満たした場合に日本とドイツの両方で原則免税の適用を受けることが可能です。

日本とドイツ二国間での利子・ロイヤリティに係る源泉税の軽減税率の適用は、租税条約の適用に関する届出書を提出しなければ受けられません。

ドイツの法人税に対する優遇措置

ドイツの法人税に対する優遇措置には、「追加減価償却」「投資控除、研究開発税制」などの法人税優遇措置があります。これらの制度により、中小企業の所得税納税額が軽減されています。

追加減価償却

追加減価償却は、原則的に課税所得額が20万ユーロ以下で、一定の条件を満たした中小企業が受けられる優遇措置です。追加減価償却により、経費の追加計上で納税額の軽減につなげられるでしょう。

特定の事業・地域において定められた固定資産を取得した場合に、固定資産の通常の減価償却費だけでなく、減価償却費に20%を追加した金額で減価償却が可能となり、費用を計上できます。2020年1月1日から2030年12月31日までに電気自動車を購入した場合には、購入した年度で50%の追加減価償却が可能となります。

その年の経費を増額できるため、課税所得額の大幅削減にも活用できるでしょう。

投資控除

追加減価償却と同様の条件に該当する中小企業は、投資控除の適用も受けられます。投資控除は、中小企業が投資を行いやすくするための措置として設けられました。

投資控除額は、資産の購入や製造を行う際に、その支出を前年に繰り上げて控除できる優遇措置です。事業に供する新品もしくは中古の機械・オフィス什器・コンピュータ・乗用車といった固定資産で、特定の資産が対象となります。

購入前に費用の50%までを「投資控除額」として、利益からの控除が可能です。事前に納税額を軽減して、購入に備えることもできるでしょう。

研究開発税制

研究開発税制は適格研究開発を行っていて、ドイツで源泉所得税課税対象となる事業を行う個人、ドイツで法人税の課税対象となる企業が対象となる優遇措置です。研究・開発にかかった費用を法人税から控除できる制度で、中小企業の研究開発活動への取り組み促進を狙いとして制定されました。

控除額に該当する適格研究開発費は、「基礎研究」「応用研究」「実験開発活動」のどれかに該当ものと定められています。研究開発に携わる従業員の人件費、外注時には委託費の60%が経費に認められます。

原則、最大で200万ユーロまでを計上できます。人件費などの合計の25%は、助成金の対象にもなります。

まとめ

ドイツの法人税は、ドイツに恒久的施設を置く法人すべてが対象となります。エリアによって法人税率が異なるドイツの税制の特長を押さえ、二国間租税条約、法人税の優遇措置など節税につながる各種制度を把握することで、より有利に海外進出を進められるでしょう。

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