ドイツ進出におけるメリットとデメリットにはどのようなものがあるのでしょう。欧州のスタートアップ首都と呼ばれるベルリンをはじめ、ミュンヘンやハンブルクなどで様々なスタートアップが生まれている実績があります。

とくにベルリンから生まれたスタートアップが急成長を遂げる成功例も多く、現在では欧州内でも有数のスタートアップ都市として知られています。ドイツでスタートアップが促進されている理由には、その地理的な要因や充実した人材など多くの理由が挙げられるでしょう。

支援制度も充実しているドイツのスタートアップについて、その特徴やメリット、デメリットを解説します。

スタートアップがドイツへ進出する「メリット」

スタートアップがドイツに進出するメリットには、ヨーロッパの中心であることや英語で生活できることなどもあります。ドイツに進出する際に最初におさえておきたいメリットについて、詳しく解説していきます。

ヨーロッパのハブ的要素

ドイツは地理的にヨーロッパの中心にある都市です。ロンドンへは2時間ほど、主なヨーロッパの主要都市には1時間程度で到着するため、利便性の高さが大きなメリットといえるでしょう。

ドイツでは、フランクフルト、ミュンヘン、デュッセルドルフの3都市から日本への直行便も出ており、日本からのアクセスが容易な点も魅力です。また、ドイツの東側に位置するベルリンには、東欧から高度なIT人材が流入するケースも多く、人材確保の面でも地理的に有利といえます。

英語で生活できる

世界中の様々な国から起業家やエンジニアなどの人材が集まっているドイツは、フランスなど他のヨーロッパの大都市と比べて英語が通じやすい特徴があります。とくにベルリンやハンブルグ、フランクフルトなど、国際的な都市では日常会話も英語が話せれば問題ありません。

日常生活よりもビジネスシーンの方がさらに英語を使うケースが多いため、ドイツ語を話せなくてもスタートアップが可能です。

支援制度が充実

ドイツでは国や州、教育機関などによるスタートアップに対する様々な支援が準備されています。スタートアップ企業への資金調達支援、要件をクリアした企業に創業当初毎月支給される補助金制度などもあり、スタートアップをサポートするイベントなどもたくさんの中から選ぶ事ができるでしょう。

家賃や物価が低い

ドイツはヨーロッパでも経済が発達した都市のひとつですが、先進国の都市の中でも物価が低いという特徴があります。家賃が安いため住宅費用を抑える事ができ、低価格で食材が購入できる事から、起業後に暮らす際の生活費が他の都市よりもかかりません。

注目が集まる欧州のスタートアップ首都「ベルリン」

現在ドイツのベルリンはスタートアップ首都として、多くの市場から注目されています。世界中から海外進出を目指すスタートアップが集まるベルリンの特徴について解説します。

スタートアップ首都「ベルリン」

ベルリンでは年間500以上のスタートアップ企業が登記されています。また、2010年代以降、IT、音楽系など様々な事業で成功を収めるユニコーン企業を輩出している事から、欧州のスタートアップ首都として知られています。

ベルリンは欧州の他の主要都市と比べて物価が低く、市民の7割が英語を使用している事もあり、かなり国際的な街といえるでしょう。スタートアップに関係する多数のイベントも英語で開催し、海外からの進出も幅広く受け入れています。

立地条件

ベルリンは東ヨーロッパと西ヨーロッパの間という好立地にあります。東ヨーロッパに多い優秀なIT技術者とのアクセスも良く、186ヶ国以上の外国人が住んでいる国際的な街として、またその多様性とクリエイティビティといった特徴も、注目を集めている原因のひとつでしょう。

ベルリンのスタートアップエコシステム

シリコンバレーなどとは異なり、ベルリンのスタートアップで不安要素とされていたのが資金調達の面でした。ところが、積極的に行われているスタートアップ支援策などの効果から、ベルリンのスタートアップにも世界各国の投資家から資金が集まり、2019年にはベルリンだけで約37億ユーロもの投資額が実現しています。

現在ベルリンでは、スタートアップに莫大な資金が集まるスタートアップエコシステムが形成された事により、スタートアップ企業の資金調達も可能になりました。数多くのVCとエンジェル投資により実現した巨額の投資額は、欧州ほとんどの都市と比較してもその規模で負けていません。

ベルリンのスタートアップの特徴

ベルリンのスタートアップが有名になり始めたのは2010年代頃からです。スタートアップ都市として、欧州ではロンドンと並び数多くの企業を生み出しています。

主な特徴

  • スタートアップエコシステムの形成による巨額の資金提供
  • 創業者の多くは外国人、海外向けのサービスが多い
  • 創業から短期間で上場するユニコーン企業を次々輩出
  • SNSやクラウドサービスなどのIT関連から、宅配サービス、EC、ヘルス、スマートシティ分野が注目されている

参考サイト:日本貿易振興機構(ジェトロ)「2019年のスタートアップ投資額、前年比35%増の62億ユーロに拡大」

ミュンヘンやハンブルクなど「各都市の特徴」

ドイツ国内のスタートアップ進出候補地はベルリンだけではありません。ベルリン以外の都市ではどのようなスタートアップ支援が行われているのでしょうか。

ミュンヘンの特徴

バイエルン州の州都である「ミュンヘン」は、自動車・機械を中心とする製造業が盛んな産業集積地です。BMWやアウディなどのグローバル企業や、欧州トップレベルの大学・研究機関が集中しています。また近年ではマイクロソフトやIBMなどの主要企業の進出により、欧州におけるデジタル製造業の中心へと発展しています。

アイデア段階の若い起業家やスタートアップ企業が、こうした大学や研究機関が行っているコンペティションなどから支援を受けられることも大きな特徴です。またVC投資もベルリンに次いで多く、提携候補企業とのネットワーキング機会の提供やビジネスコンテストの開催など、州独自のスタートアップ支援も充実しています。

フランクフルトの特徴

欧州中央銀行・連邦銀行などドイツ国内外の銀行が集まるフランクフルトは、ヨーロッパ屈指の金融都市です。欧州金融の中心であることから、フィンテックを中心としたスタートアップ支援が盛んです。

ハンブルクの特徴

ドイツで二番目に大きい都市であるハンブルクは、通信社や放送局、新聞社が拠点を置くドイツメディアの中心地です。またハンブルクは一つの都市ながら連邦州を構成する特別市でもあります。

ドイツのスタートアップの特徴として、既存産業や研究機関等との協業が挙げられます。ハンブルクでは新聞・出版企業とのオープンイノベーションやエコシステムの成功モデルもあり、都市の特色とスタートアップとの連携が産業の成長を加速させています。

スタートアップがドイツ進出にする「デメリット」

スタートアップがドイツに進出するデメリットには、事業を立ち上げるまでにかかる期間や働き方の違いなどがあります。国際的な都市であっても言語や文化の違いなど、どうしても異なる部分には注意しなければなりません。

事業を立ち上げるまでの期間

ドイツに会社設立を行い事業進出する際には、手続きが複雑で事業の立ち上げまでに時間がかかりやすいといった問題があります。

進出形態には「現地法人」「駐在員事務所」「支店」などの形があり、駐在員事務所の場合は営業活動をしない施設とみなされます。そのため、営業活動による売上げが発生した時にはドイツ内で法人税を支払わなければなりません。

営業活動を行う事業所の設立を想定している場合には駐在員事務所は税金面などで不利になるでしょう。また、支社をドイツに設立する形態の場合、経営や営業活動を本社名義で行わなければいけないといったデメリットもあるため、注意が必要です。

ドイツでは、日本から進出した企業に限らず様々なメリットから大多数の会社が有限会社の形態を選んでいます。ドイツの有限会社は他の会社形態よりも比較的簡単に設立できる、柔軟性がある運営方法が可能、信用度が高いなどのメリットがあります。

たいして株式会社は、株主総会、取締役会、監査役会が必要になるなど運営上の様々な制限があり、設立時にも多くの手続きを行わなければならないため、一般的に大規模な企業でしか取り入れられていません。

ただし有限会社の設立の場合でも、公証人による確認が必要で、企業設立のために住所地など様々な事項を決定し手続きを行ってから、登記が完了するまでには2週間から2ヶ月かかる事もあるなど、設立までには期間がかかります。そのため、設立までには時間にゆとりを持って行う必要があるでしょう。

働き方の違いや言葉の壁

ドイツではほとんどのシーンで英語を使えますが、公用語はドイツ語のため、英語が話せない従業員もいます。現地で事業を行う際には、コミュニケーションの円滑化のために通訳の利用もおすすめです。

ドイツでは、雇用に関する法律で従業員が保護されている点にも注意しなければなりません。起業後は、従業員の労働時間、有給日数や法定祝日など、法律で定められている働き方を守る事で、労働力を適切に確保する必要があります。

まとめ

スタートアップ首都ベルリンを始め、スタートアップ企業を次々生み出しているのがドイツのスタートアップエコシステムです。欧州各国だけでなく日本からのアクセスにも便利、海外起業家の受け入れ体制も整っているドイツなら、自社の事業を海外へ展開し発展させる事ができるでしょう。

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また、海外のグローバルオープンイノベーション、日本企業の事業創出をテーマとするイベントなどを随時開催、オープンイノベーションに取り組むドイツ企業と、ドイツへの展開を狙うスタートアップのオンラインマッチメイキングも行っています。最新のイベント情報をチェックして、海外展開に向けた一歩を踏み出してみましょう。

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hawaiiwater

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