海外ビジネスへの参入は莫大な資金が必要なため、資金繰りに無理が生じて諦めてしまうこともあります。とくに中小企業では、資金力の面で海外進出を難しいと考える会社も多いでしょう。
しかし、そういった資金面で不安を抱える中小企業を中心として利用できる補助金・助成金制度があります。海外進出を目指す企業向けに、無利子、低金利、返済の必要なしなどの有利な条件で利用できる制度です。
フェーズごとに利用できる制度を紹介します。
計画・ブランディング戦略のための補助金・助成金制度
計画段階から使えて、ブランディング戦略やスタートアップのタイミングで活用しやすい補助金・助成金制度があります。海外進出を目指すためには準備も重要なので、こうした制度を活用して、資金不足を補い、海外ビジネスへの確固とした足掛かりを作っていきましょう。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(グローバル市場開拓枠)
中小企業庁及び独立行政法人中小企業基盤整備機構で実施している事業で、海外事業の拡大・強化等を目的とした中小企業等へ向けています。製品・サービス開発、または生産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な設備・システム投資等を支援するための補助金です。
国内拠点の生産性を高めるための事業なのか、海外顧客へ向けた事業なのかなど、事業内容によって、「海外直接投資型」「海外市場開拓型(JAPANブランド)類型」「インバウンド市場開拓型」「海外事業者との共同事業類型」と分かれています。
補助金額 | 100万~3,000万円 ※大幅な賃上げに取り組まれる場合は更に上がります |
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補助率 | 中小企業は1/2、小規模企業社・小規模事業者は2/3 |
公募 | 年に複数回 |
参考サイト:「ものづくり補助金総合サイト」
外国出願補助金(中小企業等海外出願・侵害対策支援事業費補助金)
特許庁で実施している補助金制度です。受付は日本貿易振興機構(ジェトロ)と各都道府県等中小企業支援センター等を通じて行います。中小企業の外国出願促進のための補助金で、海外進出を計画している中小企業の出願費用の一部を助成するものです。補助対象になる費用は、出願料や国内・現地代理人費用、翻訳費用などです。
日本貿易振興機構(ジェトロ)と各都道府県等中小企業支援センター等では公募期間が異なるため、それぞれ確認するようにしてください。
補助金額 | 1企業あたりの上限額300万円(複数案件の場合) |
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補助率 | 補助対象費用の2分の1以内 |
案件ごとの上限 | 特許150万円、実用新案・意匠・商標出願60万円、冒認対策商標30万円 |
公募 | 令和5年度は年に3回実施 |
対象 | 中小企業者または中小企業者で構成されるグループ (構成員のうち中小企業者が2/3以上を占める者) ただし、みなし大企業を除く |
地域団体商標の外国出願については商工会議所、商工会、NPO法人等 |
参考サイト:特許庁「外国出願に要する費用の半額を補助します」
普及・実証・ビジネス化事業
国際協力機構(JICA)で実施している制度です。途上国の課題解決に貢献できるビジネスの事業化を目指す中小企業から企画書(事業提案書)を公募します。採択された企業には、ビジネスモデルの検証やODA事業への活用可能性の検討等を通じて、事業計画案策定を支援します。
ただし、提案法人が有する製品・サービス等の海外展開という観点から、提案する製品・サービス・技術等は日本国内または海外での販売実績があることが前提となっています。
・中小企業支援型
補助金額 | 上限1億円(大規模・高度な製品の実証を行う場合には上限5億円、 インフラ整備技術推進案件・地域産業集積海外展開推進案件は上限2億円) |
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公募 | 年1回 |
対象 | 中小企業、中堅企業、中小企業団体 |
・SDGs ビジネス支援型
補助金額 | 上限5,000万円 |
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公募 | 年1回 |
対象 | 中小企業/中堅企業以外の営利法人、非営利法人、 本支援事業の中小企業支援型をすでに2回 実施済の法人による 3回目の応募となる法人 |
参考サイト:
独立行政法人 国際協力機構「普及・実証・ビジネス化事業(中小企業支援型)
独立行政法人 国際協力機構「普及・実証・ビジネス化事業(SDGsビジネス支援型)」
技術協力活用型・新興国市場開拓事業費補助金(社会課題解決型国際共同開発事業(製品・サービス開発等支援事業))
名称:「J-Partnership 製品・サービス開発等支援事業補助金」
経済産業省が公募している事業で、アフリカ諸国をはじめとする新興国・開発途上国の社会問題解決のための製品・サービスの事業展開を目指す企業が対象です。
「J-Partnership 製品・サービス開発等支援事業補助金」という名称で、製品・サービスの開発や実証・評価など、本事業終了後2年以内に事業化を目指すビジネスプランに対し、事業開発にかかる費用の一部を補助金として提供します。
補助金額 | 上限額1,500万円、大企業の場合は1社あたり最大2,500万円 |
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補助率 | 補助対象経費のうち、中堅/中小企業は2/3、大企業は1/3 |
参考サイト:
経済産業省「令和5年度「技術協力活用型・新興国市場開拓事業費補助金(社会課題解決型国際共同開発事業)」に係る補助事業者の公募について」
J-Partnership事務局「J-Partnership」
海外展開を発展させる補助金・助成金・ローン
海外展開のためには、準備・計画段階だけでなく発展させていくための資金も必要です。次の段階へと進むために活用できる補助金・助成金・ローンなどもさまざまな機関で実施しています。以下に記したもののほかにも、各地方自治体や財団法人などの支援サービスもあります。
中堅・中小企業向け融資
国際協力銀行(JBIC)で行っている融資で、開発途上国へ進出する中堅・中小企業に対して日本の金融機関と協調融資の下で長期融資します。企業規模は、中小企業であれば資本金3億円以下または常時使用する従業員数300名以下、中堅企業であれば資本金10億円未満が対象。
資金用途は、対象国の事業において必要な設備投資資金(新規、増設、更新)やM&A資金等の長期資金です。原則所要資金の一定割合(7割)を融資割合の上限として、民間金融機関(地銀/信金/メガバンク等)と協調して融資を行い、融資金額についての定めはありません。
参考サイト:国際協力銀行「中堅・中小企業分野」
海外展開・事業再編資金
日本政策金融公庫による融資で、海外展開や海外事業の再編を必要としている企業へ長期運転資金や設備資金を融資します。直接貸付の場合には14億4千万円(うち運転資金9億6千万円)、代理貸付の場合には1億2千万円が融資限度額です。
基準利率は上限2.5%、信用リスクや融資期間に応じて所定の利率が適用されます。返済期間は、設備資金であれば20年以内(うち据置期間2年以内)、運転資金であれば7年以内(うち据置期間2年以内)が基本です。
参考サイト:日本政策金融公庫「海外展開・事業再編資金」
海外見本市・展示会出展支援
日本貿易振興機構(JETRO)の行う、海外の見本市・展示会のジャパンブース(ジャパンパビリオン)への出展支援制度です。出品申込み等の手続きもジェトロが行い、ブースのデザインや出品物の通関・輸送などもパーッケージで提供。
ジェトロのジャパンブースへの出展することで、単独出店に比べ出店に関わる負担やコストの軽減ができます。また対象見本市・展示会によっては、ジェトロが一部出店経費を補助してくれる場合もあります。
参考サイト:日本貿易振興機構(ジェトロ)「展示会・商談会への出展支援」
海外ビジネスへの出資・融資のサポート制度
海外ビジネスへの直接出資や融資以外でも、資金を調達するためのサポートがあります。
スタンドバイ・クレジット制度
日本政策金融公庫や地方銀行、商工組合中央金庫(商工中金)等が行っている、現地法人の資金調達のための制度です。海外現地法人が現地金融機関から現地流通通貨建ての融資を受ける際に、現地金融機関に対し信用状を発行します。日本政策金融公庫や銀行等が信用保証をすることで、融資が受けやすくなるようサポートします。
日本政策金融公庫の場合、保証限度額は1法人あたり4億5千万円。信用リスクや信用状の有効期間等に応じて所定の補償料率が適用されます。
参考サイト:日本政策金融公庫「スタンドバイ・クレジット制度」
特定信用状関連保証
全国信用保証協会の行う、資金調達をサポートする制度です。海外子会社を有する国内中小企業が対象で、海外子会社が現地の金融機関から融資を受ける際、国内の金融機関が発行する「信用状」に関しての債務保証。国内の金融機関に対して、国内の親会社が負担する債務を信用保証協会が債務保証し、信用力を高めます。
資金使途は海外子会社の現地金融機関からの借入金であり、信用状の額面は2億5千万円、限度額は2億円です。運転資金や設備資金のどちらにも活用することができる「一般保証」とは別枠で利用することも可能です。
参考サイト:一般社団法人 全国信用保証協会連合会「海外展開をお考えの方」
ファンド出資
中小企業基盤整備機構(中小機構)が行っているファンド出資。中小企業に対する投資事業を行う民間期間などとともに投資ファンドを組成し、ベンチャーや中小企業への資金提供を行います。新事業の展開の促進や事業の拡大、事業再生などの支援をします。
ファンド出資事業は投資先に応じて、創業または成長期の段階にある中小企業を支援する「企業支援ファンド」、成長が見込まれる新事業展開を支援する「中小企業成長支援ファンド」、再生に取り組む中小企業を支援する「中小企業再生ファンド」の3種類に分かれています。
参考サイト:中小機構「ファンド出資」
まとめ
海外展開を成功させるためには、莫大な資金が必要です。そのため、資金の乏しい企業は、さまざまな機関で実施している補助金や助成金制度を積極的に取り入れることをおすすめします。毎年の公募期間や支援の内容、条件等は変わる可能性もあるため、気になる情報は早めに確認しておくことが必要です。