海外ビジネスでは、国内での事業展開とは違ったメリットやデメリットがあります。実際に海外進出をしてみれば一番実感しやすいのですが、リスクを冒して実施する前に過去にあった事例を元に、どのような点が良く、どのような点が危険なのかを知ることが大切です。

海外ビジネスの成功事例や失敗事例から、安全な海外進出のヒントを探ってみましょう。

海外ビジネスにおける成功事例

海外ビジネスが盛んになり、企業規模によらず海外進出を実現した企業が増えています。海外ビジネスには大きな世界市場や安価な製造コストなどの魅力が多く、それを活かして成功している事例も多いようです。魅力的であることを認識するにとどまらず、成功事例からのヒントを得て、自社のビジネス展開に活かしましょう。

日本の高品質なサービスの活用で成功

日本企業の海外進出で成功を収めた事例として注目したいのが、アフターフォローの充実と商品ブランドの確立を丁寧に進めた例です。アフターフォローやアフターサービスは、まだあまり充実していない国も多く、日本のサービスの良さをアピールするチャンスでもあります。これらを充実し徹底させることで、現地企業や顧客の信頼を掴むことができ、シェアを獲得できます。

現地へのローカライズで成功

商品価値を損なうことなく現地の消費者の心を掴むローカライズに成功した企業も、海外進出によって成功を果たしたと言えます。徹底したローカライズ戦略で、現地向けカスタマイズを恐れずに実施したことで成功しました。また、現地子会社を中心に地道に販路を広げていき、展示会や商談会などのチャンスも活かすことで裾野を広げていっています。

高い自社技術の伝承で成功

海外での現地社員の教育や日本国内と同様の高い品質の維持は難しい問題です。しかし、それに成功し、自社技術を現地へ落とし込むことで海外ビジネスを成功させている事例もあります。きめ細かい作業手順書を作成することで技術を現地社員に伝承し、さらに国内工場と同じ工具や生産設備を導入しています。

ローカルマネージャーの育成で現地社員の活用に成功

日本人の海外ビジネス参入において難しいとされている人材育成でも成功事例はあります。本社主体から地域への権限の委譲を方針にあげ、ローカルマネージャーの育成を進めることで企業理念やマネージメントの原理原則を学び、マネージャーとしての理想を描けるようになりました。また、現地マネージャー同士の連携や本社とのコミュニケーションの強化もでき、円滑な業務遂行にもつながっています。

参考サイト:経済産業省「海外展開の成功事例

海外ビジネスにおける失敗事例


海外ビジネスでは、成功している企業も多いですが、失敗した事例も増えています。失敗にはそれなりの理由があり、予防のためには事例を見ることで失敗の原因を知り、対策を練ることが必要です。

パートナー選定での失敗

海外での失敗事例として多いのは、合弁相手や取引相手の選定ミスです。実力を測り損ねて選んでしまい、経営や受注が安定しないケースがあります。現地の情報収集不足や紹介先の問題、場合によっては地方政府から紹介された場合でも失敗した事例もあります。

カントリーギャップでの失敗

日本と海外現地の慣習や慣行の軋轢による失敗事例もよくあるものです。日本の労務管理を現地で実行しようとして現地社員から反発を招き、転職者を増やしてしまったり、ストライキをされたりといったトラブルに発展することもあります。

また、そもそも現地の事情などの情報が不足していたり、言語能力の足りない人材を現地に派遣したりして、失敗するケースもあります。

自社ブランドへのプライドによる失敗

日本の製品は品質がよく、メイドインジャパンは海外でも人気が高くなっています。しかし、だからといって自社ブランドに自信やプライドを持ちすぎるのは良いことではありません。日本国内では知名度が高くても、世界レベルでは知られておらず、世界市場でもすでに競合が多く存在しており、参入さえも難しいレッドオーシャンになっていることもあるのです。

海外市場調査の重要性

例に上げた3つのパターンは、現地でビジネスを始める前に入念な市場調査をすることで防げる可能性があります。まずは現地の市場規模を把握すること。さらに現地でのユーザーニーズの分析、競合企業やライバルの存在については必ずチェックしたい項目です。

また海外進出においては、日本とは異なる法律や規制・商習慣があります。現地での法律や習慣を理解することで、トラブルの発生を未然に防ぐことができます。また外貨規制のある国も多く、外資系企業の単独での参入が難しい場合があるため、信頼できるパートナーを見つけることも重要です。

さらに政治や経済・社会情勢などのカントリーリスクも考慮したほうがよいでしょう。新興国においては今後の経済成長が期待される反面、国内の基盤の不安定さが先進国に比べて高い傾向にあります。進出先を選ぶ際には、このリスクも知っておいてください。

海外のビジネスアイデアや事例から学ぶ

海外進出を成功させるためには、常に海外のサービスやビジネスについての情報・最新トレンドを仕入れておくとよいでしょう。とくに新規事業では、タイミングとアイデアが大きなポイントになります。

市場環境に応じたビジネス

コロナ禍による外出自粛で在宅時間が増えたことにより、海外ではそれに対応する新しいサービスが続々と誕生しました。アメリカでは、複数の専門家が自宅の収集品を査定してくれるというサービスや、デリバリーワーカーへ向けた専用グッズの開発など、伸びている市場に対して的確なサービスを生み出しています。

また日本国内でも増加傾向にある、厨房機能のみを有しデリバリーに特化した「ゴーストキッチン」は、一過性のビジネスではなく今後世界中でさらに拡大すると予測されています。

スモールビジネスからの起業

海外では、少額の開業資金も起業できる「スモールビジネス」の人気が高まっています。スモールビジネスとは、その名の通り「少人数かつ小規模なビジネス」のことを指します。スモールビジネスはスタートアップとは異なり、個人の裁量によるところが大きいです。新規事業である必要もなく、銀行などから多額の資金調達をする必要もありません。

そのため、小規模事業者や個人事業主でも気軽にはじめられるメリットがあります。最近ではスモールビジネス向けのビジネスモデルを紹介するコンテンツも多く、市場の分析や競合との差別化、利益率の高いものが向いているとされています。自分の趣味や経験を活かせるビジネスを選ぶことで、常にスキルアップが必要なスモールビジネスでも苦になりません。

ただし、スモールビジネスであっても事業が安定するまでには比較的時間がかかるため、予想以上の出費の可能性を考え、当面の運転資金の準備をおすすめします。

まとめ

海外でのビジネス展開には、大きなメリットや魅力と同時に大きなリスクが伴っています。海外ビジネスを成功させるためには、成功した企業からも失敗した企業からも学ぶことがあります。成功事例からはお手本にしたい点を見出し、失敗した事例からは同様の失敗をしない教訓を得ることが必要です。

日本のビジネスパーソンや日本の企業が苦手としている現地とのコミュニケーションやローカライズなど、難しい課題もありますが、事例を見るとその多くは課題をクリアしたことで成功をつかみ取っています。まずは、成功事例から見えてくるクリアすべき課題について検討してみるべきでしょう。

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hawaiiwater

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