経済がグローバル化して国境をまたぐマネーフローは増加しています。日本においても海外での事業を検討している企業は多いでしょう。モノの輸出入は貿易収支であらわされます。中国経済の経常収支、貿易収支の赤字リスクについてまとめました。

中国の経常収支の変遷

中国は1978年に改革開放に転換してから、2012年まで平均10%近い高成長を記録しました。しかし、近年成長率は低下しています。とくに2016年以降で明らかになっているが経常収支の黒字減少です。経常収支は貿易収支、サービス収支、所得収支を合計して算出されます。所得収支は海外から得る利子や配当を指し、経常収支を見ることで海外との総合的な取引状況を知ることができるのです。

経常収支をより細かく見ていくと、貿易習字の黒字が頭打ちになり、さらにサービス収支赤字が増え続けてきたという背景があります。それが数字に表れているのが2018年1~3月期の経常収支赤字です。この時の赤字は341億ドル計上されました。これは2001年4~6月期以来の赤字です。中国では例年1~3月期は春節の影響で貿易収支黒字が縮小します。サービス赤字がゆっくりと増加して、黒字が減少することで赤字に転落したと考えられます。

ただし、中国の貿易収支はいまだに大幅な黒字であることは変わりません。2018年輸出と輸入を合わせた貿易総額は4兆6,200億ドル(約500兆円)で過去最高でした。黒字額は3,517億6,000万ドル(約38兆円)です。2017年の黒字額4215億ドル(約47兆円)と比較すると16%の減少です。

さらに、その黒字の大部分は対米黒字です。ここ1年は関税が上がる前の駆け込み需要も発生したため、今後消費マインドが低くなれば将来的には黒字を圧迫することになるでしょう。

中国のサービス収支が赤字となる理由

中国のサービス収支が赤字となる理由
中国の経常収支が赤字となった理由の1つがサービス収支の赤字拡大です。この主な原因は、中国人の海外旅行客が増えることによる旅行収支悪化でしょう。旅行者は滞在先で宿泊費や交通費を支払います。中国から海外に旅行する人々の増加によって旅行収支の赤字が拡大しています。

中国は経済発展とともに、不動産バブルで富裕層の仲間入りをする人が増えました。国民の生活が豊かになるとともに、海外旅行も盛んになり、海外製品に対する需要も増したと考えられます。

中国の税制では海外からの輸入品を中国で買うよりも、旅行先の海外で購入したほうが安くなります。また、中国人の文化として家族や親戚の分の買物を盛んにすることが多いでしょう。これが日本でも流行語となった中国人観光客の爆買いです

中国人観光客による爆買いは日本経済にも大きな恩恵でした。しかし、それが今後も続くかどうかはわかりません。中国がサービス収支の赤字対策に乗り出せば、旅行収支赤字の縮小を目指して動き始めるでしょう。

中国は米中貿易戦争の影響や生産年齢人口の減少が不安視され、厳しい状況に陥ると予想されています。その中で同じペースで中国人観光客が爆買いを続けていけば、経常収支は悪化して人民元が売られる展開になるでしょう。

2018年中国人観光客の旅行消費額は15,450億円でした。これは訪日外国人旅行消費額の34.2%を占めます。

参考:国土交通省官公庁訪日外国人消費動向調査

日本の観光小売業は中国人観光客への依存度が高いため、これが抑制されることになれば観光業小売業にとっては大ダメージとなります。また抑制される可能性があるものは観光だけではありません。海外不動産への投資や企業への投資を抑制することになれば、日本のさまざまな産業の景気にも影響があるでしょう。

中国が世界経済に与える影響

2019年国際通貨基金(IMF)の春季世界経済見通しでは中国の経常収支に警鐘が鳴らされました。2022年には中国の経常収支が赤字に転落、その額も66億ドルと予想されています。

人民元の暴落回避のためにも政府は資本流出を防ぎ資本流入を推し進めています。中国の経常収支赤字は資本流出と人民元安を想像させます。2015年チャイナショックによる株価の暴落はドルを押し上げて、中国市場に依存している多くの多国籍企業に影響を与えました。同じ轍を踏まないためにも各国、各企業で備えが必要になります。

まとめ

海外進出するということはカントリーリスクを負うことにもつながります。これから投資する国にはどのようなリスクがあるのか事前に調査しておくようにしてください。海外投資はリスクを分散させるようにおすすめします。

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