海外進出している企業の中には計画とは異なり、苦戦しているケースも少なくありません。課題を抱えている場合には、早期に対策を講じることが必要です。

中小企業・ベンチャー企業にとって海外進出は魅力的

海外展開を目指す日本企業にとって、公的機関などによる助成金・補助金制度や相談会、情報提供サービスといった制度は大きな後押しとなっています。海外進出向けのコンサルタントや必要なサポートと企業をつなぐプラットフォーム事業、コミュニティなども活発になっています。

また、アジア市場拡大によって参入のチャンスも増え、さらにインターネットなどのインフラの向上によって情報の収集もしやすくなりました。そのため資金の少ない中小企業・ベンチャー企業でも海外進出のハードルが下がり、チャンスをものにできるようになったのです。

海外ビジネスを成功させるための課題

こうした動きの中で、中小企業・ベンチャー企業も次々と海外進出を目指し始めましたが、その過程でいくつかの問題点や課題を抱える企業も出てきました。中小企業・ベンチャー企業が海外進出で成功するためには、特有の問題点や困難を克服することが大切です。

まずは差し当たって多く見られる問題点を抽出し、分析してみましょう。

課題1.海外市場での販路開拓・販売に関する問題点

海外進出のメリットとして、世界の市場を相手取ってビジネスを行うことができるということがありますが、販路を開拓できなければ、意味がありません。中小企業・ベンチャー企業では販路開拓のノウハウを持つ人材が十分にいないことや、日本での企業規模の小ささによって現地のパートナー企業からの信頼が得られにくくなることもあります。

また、資金不足のためにコンサルタントや各種専門家のアドバイスを受けること、詳しい現地調査などに十分にコストを掛けられないことも多いでしょう。市場開拓のためには、情報と調査は必須となるため、安価で利用できる公的サービスの利用、助成金・補助金制度の利用をして十分な情報を得ましょう。

海外では不可抗力として、現地の経済や環境等の変化によって経営不振に追い込まれることもあります。急激な販売不振は、中小企業・ベンチャー企業にとって大きな打撃となり、日本国内の本社にも影響を及ぼす可能性もあります。

課題2.現地のマーケットや顧客ニーズの調査不足

海外進出においては、現地での市場調査が非常に重要です。海外進出には多額の費用がかかるため、企業は失敗するリスクを少しでも軽減したいはずです。自社のサービスや商品が現地の市場に適しているのかどうか、どのようにプロモーションをするべきかを考えるために、海外市場調査は必要不可欠なのです。

この調査を怠ってしまうと、歴史や文化の違う海外の進出先では思うように事業が進まない可能性があります。日本国内で人気のある色やデザインが現地では全く受け入れられなかったり、反対に不快感をもたれてしまったりすることもあります。

海外進出が初めての場合、企業の規模に関わらず情報収集や市場調査などを経て、現地を理解していくものです。しかし、情報収集や調査の段階で、企業規模に応じて情報や調査の質に差が生まれてしまうことがあります。

とくに資金の乏しい企業では、十分な情報がないままにビジネスをスタートしてしまいます。顧客ニーズを理解していなければ、実効性のあるマーケティング戦略もできませんし、現地企業に勝ち目がありません。

課題3.人材の不足


海外でのビジネスには、専門知識や外国語のスキル、海外でのビジネス経験に基づいたグローバルな視点などを持った人材が必要となります。そのため、海外進出を目指すにあたっては、人材採用・育成を行い、海外事業部や企画室などと称した専門部署やチームを組成するのが基本です。

ところが、人材の確保や育成には時間も費用もかかり、中小企業・ベンチャー企業ではそのような専門的な人材の確保やチーム組成が難しいこともあります。

専門部署では、海外でのビジネスに備えて計画、情報収集、調査分析、外部のサポート機関との交渉、さらに現地視察などを行います。こうした工程は、国内の事業と並行して行うには質的にも量的にも負担が大きいため、専任が望ましいでしょう。

このように、海外事業に人材を十分に投入できないのも中小企業・ベンチャー企業の問題点と言えます。こうした人材難が、海外進出を遅らせたり進出後の経営に問題を起こしたりする原因となることがあります。

課題4.現地の法制度や税制・商習慣への理解不足

現地の法律や規制についても注意が必要です。外資系企業の進出を厳しく規制している国や、自国の製品やサービスを守るために海外からの輸入品に高い関税がかけている国もあります。法規制は国や地域により異なるため、製品やサービスに関する法規制は細かくチェックをしておきましょう。

さらに中小企業が海外進出するにあたって問題となりやすいのが、現地商習慣への理解です。商習慣とは、商取引に関するさまざまな慣習のことで、日本では当たり前とされている習慣が、海外では非常識と思われてしまうことも多々あります。

また、現地の人材採用や管理についての問題もあります。海外進出では、自社の社員やスタッフのみで事業を展開することは非常にまれです。「日本ではこのルールでうまくいっていたから大丈夫」「普通はきっとこう考えるでしょう」、などといった国内の常識は通用しません。

現地で外国資本の企業が生き残るためには、国や地域に沿ったローカライズも必要となりますが、日本人社員と現地社員の間で温度差が生まれてしまい、進めにくくなることもあります。

中小企業・ベンチャー企業が海外進出をするために


中小企業・ベンチャー企業が海外進出を成功させるためには、上記のような問題を1つずつ解決することが大切です。多くの問題の根底となっている資金不足には、助成金・補助金制度が役立つでしょう。

また海外進出するにあたって、国内の事業が安定していることも重要なポイントとなります。市場の先行きを見て、数年後、数十年後を見据えての海外進出が望ましいでしょう。

さらに進出する理由や目的・ビジョンを明確にし、計画を進めていくようにしてください。経営者や一部の社員の意思だけで方向性を変えることはせず、かといって現地のニーズの変化などの動きには臨機応変に対応していくことが求められます。

日本の意思決定を待つために、現地で商機を逃すということは避ける必要があります。そのため、中小企業・ベンチャー企業ならではの強みであるスピード感は、海外進出を成功に導く重要なポイントといえます。

まとめ

以上のように、海外展開を実行に移し、軌道に乗せるまでにも多くの課題が発生することを想定する必要があります。初期は小さな問題だった場合も、拠点が大きくなるにつれて問題も大きくなっていくこともあるため、問題の根源は小さいうちに解決することを常に心がける必要があります。

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hawaiiwater

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