海外進出によって得られる労働力の価値

日本は少子高齢化社会となり、消費市場の停滞・縮小が危ぶまれています。また、それだけではなく、少子高齢化に伴って労働力となる生産年齢人口の減少が起こり始めているのです。

日本では1990年代をピークに、生産年齢人口である15~64歳の割合が急激に減少してきました。こうした生産年齢人口の減少は、他の主要先進国でも起こっている現象です。

しかし、日本の減少率は特に大きく、労働力確保は、企業経営において重要な課題となっていました。そのような中、若いだけでなく安価な労働力を求めて多くの企業が海外進出をスタート。

中国などのアジア圏から始まり、ASEAN諸国へと若い労働者が豊富なエリアでの海外進出は進んでいきました。海外に生産拠点を構えることで、人件費も抑えることが可能になります。

また、生産から販売まで海外で完結させることで、次に世界に広がる消費市場の恩恵を得られるようになりました。

参考サイト
日本貿易振興機構(ジェトロ)「データで見る外国人材受け入れの実態とその意義

変わる現地採用人材の考え方

早くから海外進出を進めてきた大企業の多くは、海外に生産拠点として工場を建設し、現地の労働者を雇用する方法を採ってきました。中国などのアジア圏やアセアン諸国などを中心に新興国への進出は目覚ましく、徐々に大企業から中小企業まで海外に生産拠点を置く動きが広がっていきました。

新興国での労働力確保は、若い人材が豊富なだけでなく、コスト面でも有効でした。若く安価な労働力を得ることで、高度経済成長期に見せた人々の購買意欲に対応していました。

ところが、こうした新興国の労働者にも変化が起こっています。近年、中国やASEAN諸国では急激な人件費高騰が起こっており、安価な労働力が得られるメリットに陰りが出ているのです。

これは、新興国で行われている人材育成政策などが関係しています。今後は安価な労働力が得られる生産拠点というだけでない別の強みを見つけられない企業は、撤退や海外進出の断念を選ぶことになる可能性があります。

新しい海外進出に対する期待は、優秀な若い人材の確保へと移りそうです。たとえばベトナムでは国内でITや製造関連が盛んになっており、その専門的な技術を学んだ人材も増えています。

海外進出を成功させるための人材育成の難しさ


海外進出での労働力の確保・拡充は、労働力人口の減少が著しい日本企業にとって魅力ですが、一方で問題点もあります。それは人材育成の難しさです。

国内での外国人の雇用でも海外での現地採用でも、日本企業は同様の悩みに直面しています。文化や商習慣、ビジネスへの価値観、一般的な労働環境の在り方など、さまざまな違いが日本企業と外国人労働者との間に溝を作り、人材育成を停滞させてしまいます。

育成を阻む要因として以下のようなことが挙げられます。

時間や品質にルーズな国民性

日本人は勤勉だといわれていますが、裏を返せば日本人が他国の労働者を見た時にルーズに映る可能性が高いということです。自分たちの勤勉さや精密さが当然と思っている日本人にとっては、現地で出会う人々がルーズに見えてしまい、現地の人からすると日本人の育成方法を厳しすぎる、窮屈だと感じてしまいます。

企業理念やサービス内容などを十分な研修で根気強く定着させることが大切です。

短期雇用が当たり前の雇用環境

人材の定着率の悪さも、海外の人材育成を難しくしている要因の一つです。転職が多く、嫌になると育てる前に辞められてしまいます。

そのため、長期間かけて育成しなくても戦力になるような体制や魅力ある職場作りなど、辞める原因を改善することも必要です。

グローバル化に向け国内の外国人労働者への期待も

海外進出を目指す企業が増えたために、日本国内での外国人労働者の雇用や人材活用へも注目が集まり始めています。在日外国人も海外進出のための重要な人材です。

ジェトロの「2017年度日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」では、企業が外国人社員を雇用する上で販路拡大や対外交渉力に強く期待を寄せているというデータが出ています。大学でも外国人留学生の受入れを積極的に行っており、中国などの諸外国から日本の大学を目指す流れができています。

ただし、ここにも課題はあります。労働者と企業間の需要と供給のミスマッチ、外国人労働者に対する認識のズレ、文化の違いから起こる指導・育成の難しさなど、今後これらの課題を改善していくことで、外国人と日本企業の共存共栄がより進むでしょう。

参考サイト
日本貿易振興機構(ジェトロ)「データで見る外国人材受け入れの実態とその意義

まとめ

海外進出では、現地で得られる労働力への期待値が高く、その反面、人材育成など労働力として機能させるまでの問題も大きいものです。海外進出へ期待することも単なる安価な労働力だけではなくなっています。

若く豊富な労働力を有効に生かすために、人材育成の問題点を改善し、現地人材を自社に必要な人材へと育てましょう。

著者情報

hawaiiwater

X-HUB TOKYO
Webマガジン編集部

企業の海外進出に関する
様々な情報を発信しています。