海外進出での役割分担を明確に

海外進出では、国内本社と海外拠点の役割分担を明確にすることが重要です。それぞれが役割を把握し、それに応じた行動を取ることで、ビジネスが円滑に進みます。

国内の支店や支社と違って、進出先の拠点は、本社と物理的にも精神的にも距離が離れています。また、日本国内とは社会情勢・経済情勢、マーケットの状況も異なるうえ、変化のスピードもめまぐるしいものです。こうした遠く離れた国内本社と海外拠点は、それぞれの環境とスキルに合わせた役割を担っていく必要があります。

海外進出をするにあたって、国内本社と海外拠点の役割分担が曖昧であったり、自分たちの立場をわきまえなかったりすると、各自の持ち場が混乱してしまう恐れがあります。国内の本社支社間や社内の部署間でも同様の問題は起こり得ますが、先に述べた通り、すべてにおいて距離のある海外拠点なので、その問題の大きさは計り知れません。

国内本社との分担がうまく行かないことで、海外拠点で働く駐在員や現地採用の社員などのモチベーションが下がったり、事業のスキームを見誤ったりすることがあります。すると、海外でのビジネスを縮小させ、撤退の可能性さえも生まれてしまうのです。莫大な資金を投資することの多い海外進出では、時に本社の経営さえも危うくします。海外進出を考えるなら、それぞれの役割について十分に理解しておくことが大切です。

本社の役割

海外進出における本社の役割は、人材供給機能が大きくなります。海外進出をするにあたっては、海外に駐在員を赴任させ、定期的に視察していくことが必要です。こうした人材を適切に供給、管理することで海外拠点を働きやすいものにしていきます。

また、労務管理や心身の健康状態などの管理も大切な業務です。海外の慣れない土地で心身の健康を損なうことは多くみられます。そのため、現地での生活に無理がないか、困ったことはないか、気を配ることも重要な役割となります。

・主役はあくまで現地だと認識する
海外進出での本社の役割は、基本的にサポート役です。あくまでも現地拠点が主役であることを本社は理解しなければいけません。本社を主体で海外ビジネスを展開すると、いつの間にか「本社が指示を出し、現地は言うことを聞くだけ」の状態になってしまいます。これでは現地の声が十分に届かず、ビジネスチャンスに後れを取りますし、現地の不満が募ります。

・支援は迅速に行う
海外では、日本企業の決定の遅さがビジネスチャンスを逃すリスクとなることがあります。本社も、海外事業に関してはスピード感ある対応が必要です。予算や人材提供など、必要な支援の要請には、迅速かつ柔軟な対応で現地社員をサポートしましょう。

・メンタルヘルス・体調管理
海外展開は、企業だけでなく現地に赴く社員にとっても大きなチャンスとなりますが、その反面 、本社と現地社員の板ばさみとなり、海外での慣れない暮らしが重なりストレスがたまりがちです。そのため、本社では常に海外駐在員のメンタルヘルスや体調に気を配り、国内外で適切な健診などが受けられるよう注意 を払う必要があります。駐在保険 という、病気や 怪我 の治療費の補償はもちろん、適切な病院 の紹介 やトラブルの際に通訳の派遣等もサポートしてくれる保険もありますので、それらへの加入も考えてみる価値は大いにあります。特に家族で渡航する場合には、安心した生活のためには不可欠かもしれません。

・定期的な視察
海外拠点が本格的にスタートしたら、本社は定期的に社員を視察に送り、現状把握に努めましょう。現地社員に任せきりになったり、逆に現地の事情を知らずに指示を押し付けたりすることのないよう、必要なサポートや情報提 供などを行います。生の声を聞くために、駐在員や現地社員との面談などを設けることも大切です。

参考:労働政策研究・研修機構「海外展開の進展と国内本社の役割

海外拠点の役割


海外拠点は企業の海外進出の足がかりだけでなく、ビジネスの最前線 として活躍できる場です。本社の言いなりになるのではなく、それでいて本社の理念やブラ ンドを置き去りに独走 せず、連携をとって海外でのビジネスを盛立てていく必要があります。海外拠点では、本社では知りえない現地のマーケットや社会情勢などを肌で感じられます。それを本社と共有し、ビジネスチャンスを掴む提案を積極的に行なっていくことが大切です。

・現地駐在員は情報をいち早く掴む
現地駐在員は、現地の取引先や納品業者、同業他社と積極的にコミュニケーションを取り、活きた情報の取得に努めることが大切です。さらに掴んだ情報は、正確かつスピーディーに本社と共有し、次の一手を探る手立てにします。海外のビジネスシーンや社会情勢は変化が激しく、速やかな反応が求められます。

・現地駐在員は実のある対策案を積極的に行う
現地駐在員こそが生のマーケットを見ている唯一の存在であり、現地の流行や嗜好などの情報が手に入るポジションにいます。情報を収集し、本社と共有するだけでなく、そこから対策の提案、戦略策定を行います。

まとめ

海外進出では、本社と海外拠点がそれぞれの役割を認識し、お互いの領分を侵すことなく協力してビジネスを進めていかなければいけません。本社は現地の声を取り入れ、柔軟かつスピーディーに、海外拠点では現地でしか手に入らない情報と戦略を提供、必要な支援を求めることが大切です。

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hawaiiwater

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