日本企業の海外進出が進んでいます。海外に拠点を構えることでビジネスの可能性も広がります。しかし、海外でのビジネスは日本との違いを知っておかないと手痛い失敗をしてしまうことがあるので注意が必要です。

徹底した個人主義の海外

日本と海外のビジネスの違いが生まれる原因は、集団と個人の考え方の違いにあります。

個人主義の海外

ご存知のように海外は個人主義が徹底されています。そのため企業においても個人が独立して重要な仕事を任されることが多くなる傾向があります。単独でどれだけの成果を上げられるかが重要なので、報酬も貢献度合いに合わせて厳格に決定されます。

階層型組織構造の日本

日本では上司が部下を管理する仕組みになっているため、部下がいないうちはリーダーシップや成果への責任を求められることがあまりありません。一方で、海外では一社員であっても成果や結果に責任を持ち、それぞれがリーダーシップを発揮することが求められます。

日本においては個人がスタンドプレーするよりも、グループに対してどれだけ貢献したかが重視されます。そのため評価もグループ単位になることが多く、個人が優秀であったとしてもグループや上司が評価されなければ、自分自身の評価につながらないこともあるのです。

海外のビジネスは意思決定がスピーディー

個人とグループの感覚の違いは意思決定のスピードにもあらわれます。

アメリカの意思決定プロセス

アメリカでは上司が自分の裁量で自由に部下に仕事を与えます。部下が自分の与えられた範囲で決断を下すことができるので、意思決定や決断が日本と比較して圧倒的に早いのです。

日本の意思決定プロセス

日本企業においては、意思決定に際して「ホウレンソウ」が基本とされます。部下には自由な裁量を与えず、上司に「報告」「連絡」「相談」をしてから上司の権限で決断が下されます。そのため、決断までの会議や書類、ミーティングに時間がかかり海外よりも決断が遅れやすくなるのです。

海外ビジネスでの会議の違い

海外ビジネスでの会議の違い

日本と海外では、会議やミーティングの文化にも違いがあります。

日本での会議

日本ではホウレンソウが基本と前述しましたが、海外においてもそれは変わりません。しかし、海外の場合はミーティングなどの場で徹底的にホウレンソウがおこなわれます。

日本でいう会議は儀礼的な面も大きく、あらかじめ関係者が根回しして会議の進行をスムーズにしておくことも珍しくありません。そのため会議は個人が意見をぶつけ合う場というよりも報告を聞く場所となってしまうことがあります。会議に出席したものの何も発言しないという社員も多い傾向があります。

海外での会議

個人主義が徹底している海外では、会議やミーティングの場でホウレンソウやディスカッションが行われます。また、会議やミーティングは少ない回数、短時間でよりよい結論を道の導き出すことが重要視されます。時間を無駄にしないためランチミーティングのスタイルを取る企業も多いです。

逆に日本でいう定例会議のような会議は、無駄と捉えられてしまうこともあります。社内SNSやテレビ電話、ZoomやTeamsなどのWeb会議システムを活用した遠隔ミーティングにも積極的です。大人数が実際に顔を合わせて話をするよりも、個人のリーダーシップを重視して少人数に絞った会議がおこなわれることが多いようです。

海外と日本の時間管理の考え方

海外ではプライベートの時間をしっかり区別するため、時間管理の考え方や時間に対する意識にも大きな違いがあります。

時間管理の違い

一般的に、日本の企業は定められた勤務時間に合わせて働きます。日本では明確な始業時間、定時があるため時間管理に厳しいように感じるかもしれません。しかし、業務時間に関する日本人の感覚は海外の人からみればルーズに捉えられてしまうこともあります。例えば、日本では業務時間が終わったとしても職場から仕事の電話がかかってくることは珍しくありません。

一方で、海外は仕事の時間とプライベートの時間をきっちり区分するため、業務時間外に電話をかけてはいけません。これは労働問題として扱われることもあるので注意が必要です。

時間に対する意識の違い

個人単位であっても時間に対する意識が違います。日本においては仕事が終わらず残業になったり、飲み会に遅れてきたりする光景は普通のものでしょう。残業することによってやる気や熱意をアピールするという社員もまだまだ見られます。

しかし、海外では仕事が遅くなってしまうこと自体が自己管理、時間管理が出来ていないと判断される要因です。そのため、やる気をアピールするために残業したとしても、ビジネスの基本ができていないととらえられかねません。自分の職責を明確化すると同時に、時間内にきっちりこなしてこそ優秀なビジネスパーソンだと評価されます。

商習慣・ビジネスマナーの違い

文化や価値観、社会習慣の違いによって、商習慣やビジネスマナーにも顕著な違いがあります。

商習慣とは

特定の業種や商売で長い時間をかけて形成され、定着した慣習や習慣を指します。これにはビジネスマナーや取引の方法、業界特有のルールなどが含まれます。異なる地域や文化、業種によって商習慣は大きく変わるため、新たな市場に進出する際や異業種とのビジネスを行う際には、その地域や業種特有の商習慣を理解し、遵守することが必要になってきます。

ビジナスマナーの違い

ビジネスマナーの一例として、「名刺交換」があります。日本での名刺交換は、ビジネスシーンにおける基本的な動作として根付いており、交換の仕方や流れなどが決まっています。

それに対し、海外での名刺交換は、あくまで連絡手段を共有するためのものとされ、特別なルールや厳密な作法は決まっていません。名刺にメモを書いたり、ポケットに入れたりすることも許容されています。名刺交換よりも初対面での握手が大切で、目をそらさず、笑顔で行うことが基本です。力のない握手は誠意や意欲が伝わらず、失礼と受け取られる場合もあるので注意するようにしてください。

コミュニケーションの違い

ビジネス上のコミュニケーションスタイルにも違いがあります。日本では間接的な表現が好まれ、対話の中での微妙なニュアンスや非言語的なメッセージが重要な役割を果たします。これは「ハイコンテクスト文化」とも言われ、お互いの共通認識や文化的な背景、語られていない文脈から想像する「コミュニケーション方法」を指しています。

一方、海外では直接的なコミュニケーションが一般的です。明確な表現とオープンな議論が重視され、文脈から情報を読み取るよりも、具体的で詳細な情報が好まれます。日本のように間接的な表現を好む文化と、より直接的な表現を好む文化とでは、同じ言葉でも受け取り方が大きく異なることがあるのです。

相手の文化背景に基づいた適切なコミュニケーションスタイルを身につけることで、ビジネスの進行をよりスムーズに行うことができます。

契約に関する考え方の違い

ビジネスにおける重要な要素である契約にも、国や地域による意識の違いが存在します。

日本の契約

日本における契約は、しばしば「信頼関係を表すもの」として捉えられます。日本の文化には、言葉に出さない部分まで理解することが求められる傾向があります。たとえば、「空気を読む」や「行間を読む」などがそれに該当するものです。

このような背景から、契約書は関係性を形式化するものであり、具体的な内容や行動を詳細に規定するものではないという認識が一部に存在します。そのため、契約書が曖昧であっても、関係者間の信頼関係に基づいてビジネスが進行することもあるのです。

海外の契約

海外では、契約はビジネスの基本的なルールや手順を明確にするためのツールとして扱われます。契約書はビジネスの全体像を描くための設計図のようなものであり、実行へ移す前に詳細な計画を立てることが求められます。したがって、契約書には具体的な行動や取引の詳細などが明確に記され、契約書に記載されていないことは基本的に行いません。さらに、契約に従わない場合は法的な問題が生じる可能性があります。

このような文化的な違いから、日本企業が海外でビジネスを展開する際には、法務面に気を配り、自社の立場の保護を図ることが重要です。契約書の内容には最新の注意を払い、現地パートナーと十分に交渉し、締結に持ち込むようにしてください。また、現地の法律に詳しくない場合は、現地の法律家や専門家に依頼することも有効な手段となるでしょう。

まとめ

海外進出にあたって、企業内にさまざまな国の人々が入り混じることを想定しておく必要があります。多様性がある企業は活気があり、多角的な視点からの意見が行き交う一方、コミュニケーション能力も必要です。多様な意見が出る中で、個人が発信しなければやる気やモチベーションにも大きく影響します。海外でビジネスをするうえでは企業のシステムはもちろんのこと、人と働くこと、仕事をすることへの意識自体が変革を迫られるかもしれません。

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hawaiiwater

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