シンガポールの法人税はどのくらいの税率で、企業が納付する税にはどのような特徴があるのでしょうか。シンガポールは法人税率が世界的にも低いため、海外進出先に選択することでほかの国よりも税金面での優位性が期待できます。

シンガポールではもともと法人税率が低いことに加え、スタートアップ企業や売上高が低い企業などに対し、法人税率が大幅に軽減される優遇措置も用意されています。企業の毎年の利益にかかる法人税の軽減を実現させる、シンガポールへの海外進出の際に役立つ法人税の基礎知識や注意点をまとめました。

シンガポールの法人税

シンガポールの法人税は、世界的にも低いとされています。さらに居住法人の場合には優遇税制が適用されることもあり、税金面で経営に有利な国といえるでしょう。

法人税率

シンガポールの法人税率は17%で、世界の中でも税率の低い国とされています。日本の法人税は、国税と地方税を合わせて約30%ですが、シンガポールで課されているのは国税のみであり、日本の半分近くまで税率が抑えられています。

法人税率は、シンガポールの居住法人でも非居住法人でも変わらず17%です。しかし、法人税には居住法人に対する優遇税制も設定されているため、居住法人の場合には、実効税率がかなり低くなるでしょう。

納税対象者

居住法人と非居住法人、どちらの法人も課税対象となり法人税が課されます。居住法人とは、シンガポールで登記された現地法人および支店など、国内で経営・管理される法人のことです。外国法人がシンガポール国内に設立した駐在員事務所は対象ではありません。

シンガポールで事業の経営・管理を行っている法人でも、経営判断の主体が外国法人の場合には、非居住法人に該当します。非居住法人は、シンガポールのさまざまな優遇税制の利用ができません。

課税年度

課税年度は原則として暦年です。会計年度の終了日が12月31日以外の場合には、会計事業年度を基準年度にして、会計年度の翌年に申告を行います。

2023年中に終了する会計年度の場合は、2024年に申告をしなければなりません。法人所得税には賦課課税方式が採用されています。

法人税は、納税者が事業年度後に確定申告書を計算して提出した後に納税通知書が届くため、通知書に従って法人税を納めなければなりません。法人所得税の時効は原則、賦課年度から4年と定められています。

ただし、不当行為が行われている場合には法人税の時効がなくなります。

課税対象所得

シンガポールは属地主義のため、シンガポール国内の源泉所得にしか課税されません。国外の源泉所得では、シンガポールで受け取る所得も課税所得になります。

国外源泉所得が国外で課税の対象になる、かつ国外の最高法人税率が15%以上の場合には、配当金・国外支店の利益・サービス収入の法人税は免税となり、納税義務が免除されます。

法人税の申告・納付手続き

法人税の申告では、先に決算後の見込み所得の申告をしてから確定申告を行います。確定申告の方法には企業規模に応じた3種類の方法があります。

法人税申告手順

①見込み所得の申告

法人は、決算日から3ヶ月以内に見込み所得(Estimated Chargeable Income:ECI)を申告しなければなりません。年間売上高が500万S ドル未満で、かつ課税所得が発生していない場合には見込申告は不要です。

見込申告をする段階では、納税は行いません。ECIの申告に基づいて、内国歳入庁(IRAS)から課税通知書(Notice of Assessment: NOA)が送られてくるため、NOAの発行日から1ヶ月以内に納付を行います。

②確定申告

確定申告では、決算日が含まれる年の翌年11月末までに、Form C、Form C-S、Form C-S Liteのうち該当する確定申告書を提出する必要があります。

Form C

「監査済財務諸表」「税額計算書」にその他根拠資料を添付して提出します。

Form C-S

年間売上高が500万Sドル以下など、一定の要件を満たしている中小企業の場合、Form Cよりも簡易的なForm C-Sの方法で申告が可能です。確定申告では、財務情報の記入が限定的な申告書「財務諸表」「税金計算資料」を提出しなければなりません。

Form C-Sの適用条件
  • シンガポールで設立された法人
  • 年間の売上が500万Sドル以下
  • 法人の課税所得全てが税率17%の所得
  • グループリリーフ、外国税額控除などの適用外
Form C-S Lite

売上高が20万Sドル以下の小規模企業の場合に行う確定申告の方法です。Form C-Sよりも簡略化された確定申告書の提出だけで申告でき、「財務諸表」「税金計算資料」の提出は必要ありません。

確定申告時に見込み申告の納付額が不足している場合には追加で納付し、超過していた場合には還付が受けられます。

電子申告

2018年から段階的に電子申告の義務化が進められ、2020年の賦課年度以降は見込み申告と確定申告の両方で全ての法人の電子申告が義務化されました。

軽減税率制度と二重課税の回避

シンガポールでは法人税に対して、軽減税率制度、タックスヘイブン対策税制、新スタートアップ会社税額免除制度などの優遇税制も設けられています。

軽減税率

軽減税率は、全ての居住法人のうち、課税所得額が少額の法人に対して適用される優遇税制です。法人課税所得のうち最初の20万Sドルに対して、1万Sドルまでは75%が免税となり、次の19万Sドルは50%が免税となるため、大幅な減税が可能になるでしょう。

その他、経済開発庁(EDB)などの政府機関が認定した企業は、「パイオニア・インセンティブ」「開発・拡張インセンティブ」など、事業範囲の拡大を奨励する目的で設定されている、法人税率の軽減税率適用の優遇措置が受けられます。

新スタートアップ会社税額免除制度(Tax Exemption Scheme for New Start-Up Companies)

新設法人の受けられる制度が「新スタートアップ会社税額免除制度」です。設立から3年間、法人課税所得のうち最初の10万Sドルまでが75%の免税となります。さらに、次の10万Sドルは50%が免税となるため、設立から経営が安定するまでの納税額が大幅に抑えられるでしょう。

ただし、免税となる課税所得の上限額は20万Sドル、投資持株会社および不動産には本制度は適用されません。

新スタートアップ会社税額免除制度の適用要件

  • シンガポールで設立し、税務上でもシンガポールの居住法人である企業
  • 株主が20人以下
  • 株主が全員個人、もしくは1人の個人株主が10%以上の株式を保有
  • 主な事業内容が、投資会社や、売買・投資用の不動産開発ではない

外国税額控除

二国間租税条約に基づいて運用されている、同一の所得に対して複数の国での重複課税を回避する仕組みです。日本法人とシンガポール法人間での取引があった場合などに、日本で課税された税額とシンガポールで課税された税額のどちらか低い方の税額を限度としてシンガポールの法人税額からの控除が可能です。

外国税額控除は、税務上の居住法人だけが適用になる制度のため、非居住法人は利用できません。

タックスヘイブン対策税制

タックスヘイブン対策税制は、シンガポールへの法人設立による租税回避を規制するための制度です。この制度によって日本法人の子会社の所得は株主の親会社の所得とみなされるため、日本で法人税が課税されます。

2017年の税制改正から、制度の対象となる法人や経済活動など、課税対象となる範囲が拡大されています。そのため、タックスヘイブン税制が適用になるかの判定にかかる事務負担や、国外で課税されるリスクが増大し、注意が必要になりました。

まとめ

法人を経営していく上で収益に大きく影響するのが法人税です。シンガポールの法人税は、世界的にも低く設定されており、居住法人、さらに国内の経済成長につながると判断された企業に対しては、大幅な優遇措置も適用されるため、海外展開における優位性が期待できます。

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