「スタートアップ大国」として世界中から注目を集める米国。同国はコロナ禍においてもスタートアップ業界が盛り上がりを見せており、2020年の国内のベンチャーキャピタル投資額は過去最高の約16兆円と、前年同期と比べて約10%増加しています。
世界で3番目に広大な面積をもつ米国は州によって異なる法律や税制度を導入しており、それぞれの地域に異なる特徴があります。ニューヨーク(ニューヨーク州)やボストン(マサチューセッツ州)などが位置する東海岸には、どのようなスタートアップ(SU)エコシステムが形成されており、どのようなスタートアップが活躍しているのでしょうか。東海岸のSUエコシステムの特徴をまとめました。
スタートアップエコシステム(SUエコシステム)とは
SUエコシステムとは、起業家や起業支援者、企業や大学、そして金融機関や公的機関などが結びつきながらスタートアップを次々と生み出し、それらがまた優れた人材や技術、資金などを呼び込んで発展を続ける様子を生態系になぞらえたものです。異なる強みをもつプレーヤーが集まり共同体として事業を営むことで、新たな市場の創造にもつながります。
エコシステムを形成する要素には、主に3つのポイントがあります。まず1点目は、起業家などの優秀な人材です。課題の解決に向けて熱意をもって事業を推進する人材は、エコシステムをけん引する重要な存在になります。2点目は、企業やスタートアップなどが実施する研究開発をサポートする、大学などの教育機関です。そして最後の3点目は、事業やサービス展開に必要な資金を援助する投資家の存在です。
「SUエコシステム」という言葉はもともと米国のシリコンバレーで誕生しました。しかし現在はシリコンバレーを超えて、世界中のさまざまな地域にエコステムが広がっています。米国内ではニューヨークやボストン、ワシントンDCなどが位置する東海岸にもSUエコシステムが形成されており、自治体や政府なども積極的に財政面のサポートを提供しています。
米国東海岸のSUエコシステムの特徴
米国の調査会社「Startup Genome」が世界150都市のスタートアップエコシステムを調査した2020年のランキングによると、ニューヨークは第2位、ボストンは第5位と、トップ5の地域の中に2つの東海岸の都市がランクインしました。
米国の東海岸には、工学系をはじめとしたさまざまな大学機関が数多く集積しています。また、東海岸から五大湖周辺の中西部には自動車産業など製造業で発展した都市が多く、モノづくりと関連するエコシステムが大学と密接に連携しながら広がっています。
ほかにも東海岸のそれぞれの都市には、投資家や企業を引きつける多様な魅力があります。ニューヨークには金融市場、コネチカット州には保険業界、メリーランド州のボルチモアには医療業界というように、東海岸には特徴が明確な都市が点在しています。
例えばニューヨークでは、フィンテックやサイバーセキュリティー、そしてAI(人工知能)に関するスタートアップが活躍しています。こうしたスタートアップは、金融市場が抱える課題をリアルタイムに把握しながら、課題解決に向けたサービスを展開しているのです。また、同地域には9000社以上のスタートアップ企業やユニコーン企業のほか、100以上のアクセラレーターやインキュベーターが集まり、新たなサービスを日々生み出しています。
さらに、ボストンには医療業界をけん引する大手ライフサイエンス企業やグローバル製薬企業のほか、マサチューセッツ工科大学やハーバード大学といった100を超える大学や大学の付属病院が集積しています。そのため、精密医療に関するスタートアップなどと連携して研究開発やプロジェクトを進める事例も目立ちます。
日系企業が米国に進出するメリット
東海岸をはじめとした米国には、世界中からさまざまな企業やスタートアップが進出しています。ここでは、日系企業が米国に進出する3つのメリットをご紹介します。
1:テクノロジーマーケットへのアクセス
米国には世界最大のテクノロジーマーケットが形成されています。そのため、最先端のトレンドを現地で直接学べる環境は、日系企業にとって大きなメリットになるでしょう。
2:優秀な人材へのアクセス
企業やスタートアップが事業を進めるうえでは、共に働く仲間が何よりも重要な要素になります。米国の調査会社「Startup Genome」が実施した2020年の調査では、ニューヨークはテクノロジー分野の人材ランキングで10段階評価のうち10、ボストンはライフサイエンス分野で10段階評価のうち10の最高ランクを獲得しています。
3:資本へのアクセス
米国や米国東海岸にはVC(ベンチャーキャピタル)が多く集積しています。そのため、日系企業やスタートアップが事業拡大に向けた資金調達を考えた際には、スピード感を意識して資金を調達することができます。
まとめ
米国東海岸には投資家や企業、研究機関が数多く集積したSUエコシステムが形成されています。それぞれの都市やSUエコシステムの特徴を把握することで、日系企業は展開する事業やサービスに応じて、より具体的に海外進出の道筋や戦略を立てることができるようになります。
都内スタートアップの海外進出をサポートする「X-HUB TOKYO」では、アメリカやヨーロッパ、そしてアジアなど世界各地域の最新情報をオンラインで発信するイベントを随時開催しています。最新のイベント情報をチェックして、海外進出に向けた情報収集を始めてみましょう。