海外進出で成功するには、一歩ずつの慎重な歩みが必要です。ひとつひとつ目の前の課題を段階的にクリアしていき、海外でのビジネスを成功へと導きましょう。
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海外進出の成功は容易ではない
中小企業やベンチャー企業など、海外展開を目指す企業が増えており、海外進出の可能性を模索している企業も多く見られます。
国内市場が飽和状態になった企業が海外市場へ進出して新たなビジネスチャンスを探ること、海外進出によって人件費や原材料費・税金などのコストを削減すること。さらには、海外市場に進出することで、グローバルなブランド構築を図ることを目的とするなど、その理由はさまざまです。
ジェトロ(日本貿易振興機構)が毎年実施をしている「2022年 本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」によると、海外拠点をもたない企業の海外進出への意欲は約4割と、ここ3年間では大きな変化はありません。新型コロナウイルスやロシアによるウクライナ侵攻などの国際情勢への不安、為替やインフレなどの経済的な問題が主な要因となっているようです。
日本企業の主な進出先とは
では、具体的にどのような地域へ進出しているのでしょうか。日本企業の海外進出には、アジア、北米、欧州、中南米などの市場があります。アジア市場では、人口が多く成長が著しい東南アジア諸国をはじめとして、インドや中東諸国も注目されています。北米市場では、アメリカが最大の市場ですが、カナダも重要な市場の一つです。
欧州では、ドイツ・イギリス・フランスなどを中心に、中南米ではメキシコ・ブラジル・アルゼンチンに進出している企業が多いです。中南米は政治的・経済的に不安定であることから、進出先の第一候補にはなりにくい地域ではありますが、中国からメキシコへの生産拠点の移転など、米中貿易摩擦によって存在感を増しています。
成功する企業と失敗する企業の違い
海外進出をする企業がすべてうまくいく訳ではありません。成功する企業と失敗する企業があります。成功率は進出する企業の大きさや市場によって異なりますが、多くの企業が海外進出を試みる中で、その違いがどこにあるのかを見極めなければなりません。
成功率を高めるためには、事前に十分な市場調査やリサーチを行い、進出先の文化やビジネス習慣、法律や規制を理解し、現地のニーズや要望に合わせた製品やサービスを提供することが重要です。また、現地の人材を活用し、現地のビジネスパートナーと積極的にコミュニケーションを取ることも成功率を高めるためには欠かせません。
一方で、失敗要因もあります。現地の市場や文化に対して十分な理解がない、現地のニーズに合わない製品やサービスを提供する、法律や規制を守らないことなどがその例です。成功率を高めるためには、これらの失敗要因を避けるための対策を講じる必要があります。海外進出で成功するためのポイントを詳しく見ていきましょう。
ポイント1)目的の明確化
海外進出をするには、最初に海外進出の目的を明確にしておくことが必要です。海外進出は、企業にとって大きな挑戦であり、その一歩を踏み出すには資金面でも負担が大きくなります。
海外進出以外の選択肢を考える
世の中には、ビジョンや目的もないままに海外進出することに現状打破や組織拡大への期待を託してしまう企業もあります。まずは海外進出で達成したい目的を明確にし、関わる社員全員が同じ目的を目指せる環境を整えることが必要です。
リスクを含む海外進出ですから、リスクを負ってでも進めるべきか、今一度確認しましょう。曖昧な状況下で海外進出を決定したのであれば、大前提として海外進出が必要か、それ以外の方法で目的を果たすことはできないのか、考えることも必要となります。
進出目的を明確にする
市場開拓を目的としている場合、海外市場は魅力的ですが、消費傾向に合わない展開や商品ではその魅力を活用できません。また生産コスト削減が目的の場合、人件費高騰のために思ったほど下げられないこともあります。
それ以外にも国内の既存事業が停滞したために海外を視野に入れたケースなど、本当に海外進出が必要なのか再検討が必要となることもあります。
ポイント2)市場調査・現地視察の徹底
はじめての海外進出で成功するためには、市場調査は欠かせません。
綿密な市場調査を行う
国内外に関係なく、新規事業の立ち上げに市場調査はつきものですが、海外での新規事業にはより慎重で綿密な調査が求められます。
事前の予備調査ではインターネットや調査会社、人材プラットフォームなどを活用して、日本国内で集められる情報を収集しておきます。海外の市場や消費者のニーズ、現地の人の消費行動など、国内にいてはわからないことも多いものです。
必ず現地視察をする
そのため事前の調査で情報を集めたら、現地へ赴き実際の市場の動向を肌で感じることも大切になります。現地では販売店や売買されている商品や地元企業を、現地のコーディネーターなどと回ります。
その市場において自社製品やサービス、技術が受け入れられるか検討するための情報を集めるために大切な工程です。顧客や親会社の関係などで進出を考えた場合も、将来的に販売や製造を続けられるのか、自社の生き残りのために独自の調査が必要となります。
ポイント3)進出先・現地パートナーの選定
海外進出をするには、どの国、どのエリアでビジネスを展開するのか、場所の選定が必要です。また、海外で事業をするにはその土地でのノウハウを持ったパートナーと組むことになります。
進出先の国・地域の選び方
国や地域を探す際には、自社の事業内容に適した環境や政治的、経済的、社会的条件が整っていることが前提となります。政治的に安定しており安全で、税制上のルールによって外資を受け入れている国や地域が適しています。
製造分野での進出であれば、人件費・技術力・自然環境に関するルールが、販売分野であれば、シェア・ニーズ・販路開拓の見込み・流通方法などが適していることも大切です。とくに日本人や日本の製品に対して好意的な土地であれば最適です。
信頼できるパートナーを見つける
また、国や地域が決まったら事業のパートナー企業を探しましょう。海外でも信頼できる人や企業もあればそうでないものもありますが、言葉も住む場所も違うことから行き違いが起こったり、騙されたりすることも多くなります。
信頼できるパートナーを紹介してもらえるサービスを活用するなどで、人的なトラブルを回避することも必要です。
ポイント4)インフラ整備の確認
海外でビジネスを展開する際に、とくに新興国において注意が必要となるのがインフラについてです。
水道・ガス・電気・通信サービスを確認する
新興国ではインフラが十分に発達しておらず、水道・ガス・電気をはじめ、通信システムなどで不具合を起こすことがあります。また、インフラ整備の必要性がある場合には、そのための資金も必要です。準備段階・計画段階からインフラについては十分に確認をしておき、進出可能かどうかの判断材料にします。
調達・物流ネットワークを確認する
さらには、基本的なインフラ整備とともに、ビジネスインフラの現状を確認することも大切です。製造分野での海外進出を考える場合には部品や原材料の調達について知ることが必要であり、道路・港湾の整備状況、税関システムも要確認となります。
実際に現地での原材料や資材等の調達が難しいことで撤退の決断を余儀なくされる企業も少なくありません。
ポイント5)進出を阻む条件・リスクの確認
海外進出するためにあらかじめ押さえておきたいポイントとしては、海外進出を阻む条件やリスクが進出先にあるかないかという問題もあります。海外で事業展開できるかどうかは、その国が外国人や法人が事業を始められる環境を持っているかどうかにかかっています。
外資規制をチェックする
まず考えるべきは、外資に対する規制です。外資規制とは、自国の産業・国益の保護を目的として、外国資本の参入や企業の買収に対し、国が制限をかけることを言います。
外国資本の割合や事業の分野に一定の規制を設けている場合が多く、外貨100%の法人は国によっては事業を展開することができません。その場合は、進出先の企業との合弁企業などの選択を考えましょう。
カントリーリスクを把握する
また、政治や安全面が落ち着いており、長期的・安定的に事業を継続できる地域でなければいけません。法人税や所得税、付加価値税といったその国の税制にも目を向けて、長期的に事業を行うのに不利な条件のないところを選ぶことが大切です。
カントリーリスクは各国の政策や経済状況に応じて変動するため、情勢が変わった際の撤退を決断する要件について、常に考えておく必要があります。
まとめ
以上のようなポイント5点をおさえ、目的設定、綿密な現地のビジネス環境の調査を経て実行プロセスに移ることで、よりリスクを減じた海外進出が行えるようになります。