中国は高度成長によってアジアをけん引してきた存在です。中国が持つ強みやその展望についてまとめました。

世界経済と中国の成長

世界的な不景気によって近年、世界貿易の縮小が指摘されています。世界の実質GDP成長率の推移をみると、世界経済危機が起きた2008年までは前年比5%以上という高い伸び率を示していました。しかし、経済危機以降、世界の実質GDPの成長は鈍化しています。

OECDによると2016年までの5年間、世界は低成長の罠に陥りました。このことで新興市場への投資や賃金の伸び悩みにもつながっています。また、世界各国で経済成長の内訳をみていくと、徐々にアメリカの寄与が小さくなる一方で中国が大きくなってきていることもわかります。

寄与度が高いということは中国経済の動向が世界に与える影響も大きいということです。2019年4月~6月の中国の成長率が実質で6.2%というニュースは世界的にも注目を集めました。成長率の低下や自動車販売の低迷などは世界的な不況を数字にあらわしているようにも受け取れます。

しかし、社会が成熟した結果として成長率が鈍化することは世界的にも例があることです。その中で、中国は産業構造の転換や新しい中国の強みが活かされる展開も予想されています。

投資主導型経済成長から消費主導型経済成長へ

中国の経済成長を支えてきたのが投資(固定資本形成)です。経済成長には需要と供給の2つの側面があります。工場などの設備投資が進めば供給力が増して経済成長の原動力となるでしょう。一方で、供給が需要を満たして設備の稼働率が低下してくれば投資は減衰していきます。

ただし、投資主導型経済成長は市場に歪みを作ることもあります。その1つが中国で起きた不動産バブルです。中国では世界経済危機後の2009年から東部の都市を中心に不動産市場が過熱しました。

当時の中国政府は、4兆元の景気刺激策を打ち出して金融政策を緩和しました。そのことで流動性が高まって不動産市場に投機資金が流れ込んだのです。中国は金融市場が発展途中で株式市場は多くの取引規制があります。そのため投資資金が不動産に集中しました。

企業や富裕層の資産運用先として不動産市場が活発化したことによって起こったのが不動産価格の上昇です。富裕層が住宅にするためだけでなく、家賃収入を得るために不動産を購入する一方で、不動産価格が上昇することで一部の富裕層以外が住宅を購入できなくなってしまいました。

そこで政府は2010年から不動産価格の抑制政策を打ち出し、金融引き締め政策をおこなってきました。投資主導の経済成長は国民間の格差を生み、教育や治安面でも大きな社会問題となったのです。

そこで政府が推進しているのが内需主導型成長モデルへの構造的シフトです。都市化の進展や個人所得の増加を受けて輸出依存型から、内需主導型成長モデルへのシフトが進んできます。

中間層の厚みが中国の強みに

中間層の厚みが中国の強みに
中国は人口の多さを強みにして成長していく時代は終わりました。今後は多くの製造業が自動運転化する中で雇用を維持することが重要な課題となっています。また産業構造が高度化することで労働者にも高い技術と知識が求められています。

中国では大学を目指す学生も増えると同時に、職業学校で専門知識を身に付けて卒業してから企業を目指す学生も増加しています。農村から都市部に人口が流入して中間層が増えることはこれから豊かになる中間層の安定した消費が期待できるでしょう。

そのことがわかるのが人口1人当たりの自動車保有数推移です。中国統計年鑑によると中国の自動車保有数推移は2010年から右肩上がりを続けています。しかし、自動車保有率過去推移をみると2017年の保有率は15%、日本の61%、アメリカの84%と比較するとまだまだ伸びしろが期待できる数字でしょう。

最も普及率が高い北京であっても普及率は25%にとどまります。世界一の自動車市場でありながら、2割弱しか保有していないというのは今後の市場拡大ポテンシャルは高いと考えられます。

参考:中国自動車市場の動向2019年3月
三井住友銀行(中国)有限公司企業調査部

また、農村が多い内陸部でも自動車の保有台数は都市部以上の伸び率を見せています。今後、内陸部も沿海部同様に豊かになることで消費のけん引役を担う可能性もあるでしょう。

まとめ

中国のこれからの強みとなる中間層の消費はネット通販でもよくあらわれています。大手ネット通販アリババでも交易額が順調に伸び続けています。中国でネットショッピングが盛んになる11月11日の、独身の日の売り上げは過去最高規模の2,135億元に達しました。この勢いは中国のみならず日本やアメリカにも届いています。

これだけ大きな市場が生まれたことは日本企業にとっても大きなビジネスチャンスです。中国へ海外進出するのであれば、世界を席巻する中国経済動向に注視する必要があります。

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hawaiiwater

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