海外進出では、目的を明確化することが必要です。目的を明確にすることで社内・チーム内の足並みがそろい、方向性を見失うことなく事業を進めていけるでしょう。

目的なき海外進出は成功せず

海外進出を決める企業が増えています。大企業はもちろんのこと、中小・ベンチャー企業、スタートアップ企業まで、成長する海外市場を目指し始めています。

しかし、海外進出をするにあたって、それほど真剣に目的やビジョンを考えていない企業も多いものです。とりあえず海外進出してみよう、得意先から提案されたから仕方ない、などあいまいに海外進出を決定した企業は注意が必要です。

海外進出には、国内展開とは全く違うリスクがあります。目的があいまいな状態でスタートすると、問題が起こった時の対処方法を間違えることが多くなります。

目的を持って海外進出を考えることで、そこへ到達するための計画も立てやすくなります。また、成功か失敗かの判断もしやすく、万が一事業経営に問題が出た時も早期撤退を決めて被害を縮小することもできるでしょう。

撤退を躊躇したために赤字が拡大して国内本社の経営にも悪影響を与えることもあります。最初から撤退を考えるのもおかしな話ですが、いざという時の決断のためにも目的を明らかにしておくことが必要です。

目的1:市場開拓・販路拡大

海外進出を考えるきっかけとして、市場開拓や販路の拡大を挙げる企業は多いものです。たしかに世界にはまだまだ、数えきれないビジネスチャンスが眠っています。

しかし、市場開拓や販路拡大のために海外進出を考えた企業には注意点もあります。日本で着実にシェアを伸ばし、次のステップと考えて海外市場に目を向けた企業も注意が必要です。

よくある失敗としては、日本国内と同じ感覚、同じビジネスプランでの進出が挙げられます。日本で成功したビジネスモデルが海外でも通用するとは限りません。また、現地企業がすでにある場合、参入障壁が高いこともあります。

市場開拓や販路拡大を目的にする場合には、自社のビジネスや商材が海外で受け入れられるか、さらにどのエリアが適しているかの調査と分析が必要です。仮に海外シェアを獲得できないと予測した場合、海外進出を断念、もしくは新商品の開発や既存商品のてこ入れも必要となります。

目的2:生産拠点の移動

生産拠点を海外に移すことで、生産コストを下げようと考える企業もあります。日本では、高度経済成長期の頃から製造業を中心にアジアなどに生産拠点を移す海外進出を果たしてきました。

日本国内での生産は、賃金上昇や地価高騰などによって非常にコストの高いものでした。そのため安価な労働力を求めてアジアなどの新興国を中心に、海外に工場を移転させる動きが盛んになったのです。

また、日本での工場用地の縮小もこうした動きに拍車をかけたのではないでしょうか。

ところが近年では新興国の経済成長や人材育成の進展などによって、海外の生産拠点での生産コストが上昇する事態が起こっています。人件費が高騰し、これまでのように生産拠点を海外に移すだけでは生産コストを下げることが難しくなったのです。

生産コストを抑えるために海外進出を考えている企業は、それが叶えられる国やエリアを厳選し、さらに今後の賃金上昇の予測など、計画段階で慎重な対応が必要となります。

人件費の上昇率の高いエリアで事業をスタートする場合、海外進出コストの回収までの期間の設定や資金投入計画にゆとりを持って行うことが大切です。自社資金だけでなく融資を受ける場合には、返済計画や利息支払いなども考慮しなければいけません。

目的3:部品や商材の確保しやすさ

海外進出をする企業の中には、部品や商材が確保しやすいことや安く手に入れられることをメリットとして重視する企業もあります。海外で調達することによって、部品・資材・設備・商材を安価に手に入れることができるため、人件費とともに生産コストの削減をねらおうというものです。

必要な資材や原材料、商材などを現地で調達することで、高い日本の資材や商材を使わずに生産や販売ができます。さらに現地に生産拠点とともに販路も持つことで、日本へ輸入する必要もなくなります。

部材や原材料の確保しやすさ、調達コストを考えての海外進出では、その先の販路や市場までトータルで考えた計画、ビジョンも必要となるでしょう。以前は海外進出をする企業の中でも、現地に生産コスト削減を求め、さらに円高によって逆輸入を狙ったものが多かったのですが、近年では現地に市場を求める動きの方が大きくなってきています。

こうした動きも考慮しつつ、海外進出の目的を調達コストだけに留めず考えてみることも大切です。

目的4:優秀な人材の確保


海外進出の目的に、優秀な人材の確保を挙げる企業もあります。世界各地で、新興国も含めて、優秀な人材を輩出している国が増え、数多くあります。

そういった傾向によって人件費が上昇する一方、世界を相手にするビジネスに適した人材や技術力を持った有能な人材が日本国外で確保しやすくなっています。当然、現地の事情にも精通しており、言語や現地ネットワーク構築も期待できます。

そのため、海外進出の目的の中に外国人材確保を挙げる企業が出てきているのです。

ただし、海外進出企業において人材の有効な活用を成功させるには時間もかかります。優秀な人材を集められたとしても、離職率が高く、すぐに辞めてしまうこともあります。

また、日本企業の体質が色濃く残っていると、外国人労働者の満足度が低くなり、モチベーションが低下してしまうこともあります。そのため、人材に重きを置く企業では優秀な人材の確保と定着を図り、その土地の傾向に合わせた経営や労働環境を考えることが必要となります。

まとめ

以上のように、海外進出において設定できる目的はいくつかありますが、それらを予め決定することが大切です。また、大きな目的だけではなく、何を以って目的を達成できそうかという判断のためには、KPIに分解して考えられる程度まで、目的を具体化することも大切になってきます。

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