海外進出の形態・ビジネスモデル

海外進出にはさまざまなビジネスモデルがあります。海外の大きな市場や低コストで手に入る資材・設備や人材など、海外進出によって得られる可能性のある自社ニーズに合わせて選ぶことが大切です。

海外進出で考えられる形態は、海外での法人設立や株式購入を行う直接投資のほか、輸出やターンキー契約、そしてライセンス契約やフランチャイズ契約があります。まずはライセンス契約以外の形態について解説します。

直接投資(子会社・現地法人設立)

直接投資とは、主に海外で事業を行うため、現地で法人を設立することや、投資先の企業の株式購入や既存企業の買収することです。

子会社は日本の本社が海外に支店を開設するイメージで、会計も日本の本社と一緒に行います。現地法人は、日本の企業が海外に新たに法人を設立する形態で、現地の会社法に則り運営され、法人税の申告も現地で行います。

輸出・ターンキー契約

輸出やターンキー契約は、簡単に言えば「商品や製造技術を海外に売ること」です。直接投資のように人員を海外に配置しなくてもできる進出方法です。ターンキーとは、一括受注契約のことで、発電所や工場などのプラント輸出や海外建設工事で用いられます。

フランチャイズ契約

フランチャイズとは、フランチャイズ本部(フランチャイザー)から加盟店(フランチャイジー)がノウハウの提供を受けて、事業を運営するビジネスモデルです。

具体的には、フランチャイズ本部が特定の商標や商号を使用する権利、商品の販売やサービスの提供、その他の事業や経営に関する指導や教育などを行います。これらの対価として、加盟店からフランチャイズ本部へ保証金やロイヤリティ・研修費用などの金銭を支払う事業形態のことです。

輸出同様に、フランチャイズ契約も、直接投資のように人員を海外に置く必要がありません。

ライセンス契約とは

ライセンスビジネスは、技術や商標、ブランドなどを使う権利を与えて対価を得るというビジネススキームです。ライセンス契約にも種類があるので、いくつか紹介します。

ライセンス契約

ライセンス契約とは、自社の知的財産(特許・商標・意匠・著作権・ノウハウなど)を他社に使用させる契約のことです。知的財産を持つ者を「ライセンサー」と呼び、その知的財産を使いたい者を「ライセンシー」と呼びます。この二社の間で、ライセンスの対象や金額(使用料・実施料などのロイヤリティ)、契約期間などの使用の条件について取り決めを行います。

ライセンス契約は、フランチャイズ契約と比較してもリスクが少なく、国ごとの文化や習慣などの差を乗り越えやすい側面を持っています。

直接投資の場合、自社工場や店舗の土地取得費と建設費、インフラ整備から輸送費など、莫大な資金が必要となります。ところが、ライセンス契約であれば、自社で工場や店舗を持たずともすぐにビジネスをスタートすることができます。

資金や人員が十分でない企業が海外進出をする際に向いており、自社の技術やブランドを欲しがる企業があれば、中小企業でも十分に利益を上げられます。

クロスライセンス契約

ライセンス契約には、お互いに特許やノウハウなどの知的財産を使用できるようにする「クロスライセンス契約」があります。通常のライセンス契約とは異なり、知的財産の提供に対する対価として金銭を受け取らない代わりに、相手側の知的財産の提供を受け実施・利用することができます。

サブライセンス契約

サブライセンス契約は、特許や知的財産などの実施権の許諾を受けた会社(ライセンシー)が、さらに第三者に許諾を与えることです。ライセンシーの子会社や提携企業などが製造や販売を行うような場合に用いられます。

ライセンサーにとってはライセンシーの事業の範囲が広がり、管理ができないことなどマイナス面もあり、契約に消極的な場合も多いです。ライセンス契約の際に契約書に明記されていない場合は、サブライセンス権はありませんので注意してください。

海外進出でのライセンス契約のメリット・デメリット


海外進出において、ライセンスビジネスを導入する際に考えなければいけないのがメリットとデメリットです。ライセンス契約は中小企業でも参入しやすいのですが、場合によっては不利益を被る恐れがあります。

ライセンス契約のメリット

1.コスト削減

海外進出におけるライセンス契約のメリットとして、やはりコストとリスクを抑えられる点が挙げられます。ライセンスを取得したライセンシーが事業を展開してくれるため、工場建設や出店、販路の心配がありません。

2.ライセンス収入による継続した利益

ランセンスを与えたライセンサーは、ライセンシーからライセンス使用料やロイヤリティを受取ることができます。

3.現地に合わせた事業展開

現地のライセンシーはライセンサーのブランドを背負っているため、制限はあるものの現地に合わせた創意工夫ができます。そのため、事業を展開しやすく、現地に商品を定着させやすいのです。また、国によっては直接投資ができないこともあるため、ライセンス契約を採用するしかないケースもあります。

ライセンス契約のデメリット

一方で、ライセンス契約にはデメリットとリスクもあります。

1.ブランドイメージや信用の問題

契約を結ぶと、ライセンス契約をした海外企業に対して商品やサービスを厳しく管理することができません。そのため、ライセンシーによってはブランドのイメージや信用を損なう可能性も考えられます。

2.契約終了後の懸念

また、ノウハウの管理も難しく、ライセンシーによってはライセンス契約が終了した後に競合企業となることもあります。

ライセンシーはブランド名を使うことはできなくなりますが、得たノウハウを元に独自の商品を販売することができるためです。その場合、ライセンサーの直接投資による海外進出を阻む原因になりかねません。

参考サイト:日本貿易振興機構(JETRO)「OEM契約とライセンス契約の違い」

海外でのライセンス契約とフランチャイズ契約の違い

資金の少ない企業や直接投資のできない海外進出では、ライセンス契約かフランチャイズ契約が向いています。どちらも同じようですが違いもあり、この点が大きく成否に関わる可能性があります。

どちらを選ぶにせよ、2つのビジネスの差や優位性についてチェックしておくことが大切です。2つの相違点は、管理方法です。

ライセンス契約とフランチャイズ契約の違い

ライセンス契約の場合、現地法人はある程度自由な創意工夫ができますが、フランチャイズ契約では基本的にフランチャイザーの規約やノウハウに則って事業展開していきます。そのため、フランチャイズは海外のパートナーを管理しやすく、ブランド価値を損ないにくい面があります。

共通するリスク

ただし、一方ではフランチャイズはライセンス契約よりも管理やサポートしなければならず、事業がその国に合わない場合に失敗しやすくなるのです。両方に共通するリスクは、パートナー企業との契約終了後にノウハウを模倣され、シェアを争う強力なライバル企業になってしまう点です。

そもそもノウハウを盗むつもりで契約を交わし、短期間で契約を切られるケースも見られます。こうしたリスクを抑えるためには、クロスライセンス契約を交わすなどの対策が必要です。

まとめ

海外進出を考える場合、自社の資金や取り扱うサービス、商品などに応じて方法を柔軟に選ぶことが大切です。その際、ライセンス契約は有効な選択肢と言えます。

しかし、ライセンス契約によってブランドイメージが悪くなったりノウハウを盗まれたりする可能性もあります。ライセンス契約を選ぶのであれば、自社のノウハウを奪われ泣き寝入りしないように対策することが必要です。

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hawaiiwater

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