グローバル化が進むとともに、消費者ニーズは多様化して激しい競争社会になりつつあります。今後海外進出を目指す企業もオープンイノベーションが求められるでしょう。オープンイノベーションとは何か、そのシステムなどをまとめました。

オープンイノベーションとは

グローバル化、IT化の波の中で日本企業は長くイノベーションが求められ続けています。しかし、世界的な競争環境は厳しく、新しいものを単独で生み出すことは困難でしょう。そこで自社だけのリソースだけでなく、世界中に溢れているリソースを活用しようという試みがオープンイノベーションです。

オープンイノベーションという概念が注目されるようになったきっかけが、当時米ハーバード大学経営大学院教授であったHenry W. Chesbrough氏が発表した『Open Innovation–The New Imperative for Creating and Profiting from Technology』です。

1980年代から90年代にかけて、アメリカの大手企業では数多くの画期的な研究開発がおこなわれていながら、閉鎖的な構造のために市場化 ・ 製品化までたどり着かないという現状がありました。しかし、その一方で自社内に十分な環境がなくても、外部資源を積極的に使って市場化を成し遂げた企業も生まれています。

そこでHenry W. Chesbrough氏は従来のイノベーションモデルでの産学間の障壁やギャップに問題意識を抱いて、オープンイノベーションの概念を提唱しました。

オープンイノベーションに対して自社開発の技術・製品を既存取引先のみに販売する自前主義・垂直統合型のイノベーションモデルを、クローズドイノベーションと呼びます。インターネットが発展する前までは、クローズドイノベーションである大企業のビジネスモデルでも市場で優位に立つことはできました。

しかし、情報化社会において消費者のニーズは短期間で移り変わります。また人材も流動性が増すことで、自社に優秀な人材やアイディアを囲い込むことも難しくなりました。クローズドな環境でのイノベーションがマーケットを席巻してきた時代は終わったのです。

世界のエコシステム

オープンイノベーションをおこなうにはそのためのエコシステム構築が必須です。世界のイノベーション動向に関しては、世界知的所有権機関(World Intellectual Property Organization: WIPO)が指標を策定しています。いかに効率的にイノベーションできる環境が整っているかという基準でランキングがおこなわれ、日本は2019年に15位。1位はスイス、2位はスウェーデン、3位はアメリカという結果でした。ランキング上位5か国の特徴から見て取れるのがイノベーション関連機関の多さです。日本におけるオープンイノベーションでも創出に携わる大学・研究機関、企業、政府・公的機関等の組織の数、集積度、組織間連携はポイントとなるでしょう。

たとえば企業の聖地と呼ばれているアメリカのシリコンバレーではベンチャー企業を中心としたエコシステム整備が進み、他国、他地域を先導しています。特に特徴的な文化といわれるのがリスクや失敗を恐れない風土です。エンジェル投資家やベンチャー企業を支援する存在も多く全体として高い水準のシステムが整っています。またシンガポールのように政府によって発達、成熟した枠組みが構築されているケースもあります。オープンイノベーションが安定して継続する上位国と、独自のエコシステムで成長追従するという構図が見られます。

オープンイノベーション創出に向けた環境整備

オープンイノベーション創出に向けた環境整備
世界的なオープンイノベーションの流れの中で、日本もイノベーション創出の基盤構築が進められています。日本でのオープンイノベーション事例としては企業が他社と連携して製品開発すること、産学連携でイノベーションセンターを立ち上げた事例があります。また自治体や行政、国立研究機関もオープンイノベーションを推進しています。

また自治体でもオープンデータの取り組みがおこなわれています。オープンデータへの機運が高まったのは、東日本大震災がきっかけでした。災害情報や投影性のある国策を国民に示すべきとして、webを中心に多様なデータを公開しています。政令指定都市や都道府県、中央官庁でもオープンデータが進行しています。オープンデータによって特別な人でなくても情報や論文を利用することができます。

地方自治体の取り組みとしてオープンイノベーションがおこなわれている事例もあります。大阪イノベーションハブはグランフロント大阪のナレッジキャピタルに開設されたナレッジオフィス。大阪市のグローバルイノベーション支援拠点として活動しています。

まとめ

オープンイノベーションを実現するためには政府による土壌づくりのほか、優秀な人材育成、開発に専念できる環境の提供など多くの要素が必要です。単に外部技術を取り込むこと、開発スピードや利益向上を目指すのではなく、消費者、世界的な目線に立ってどれだけの価値を創出できるか、世界にインパクトを与えられるかが今後のカギとなります。海外進出が一般的になりグローバル化した世界においてはオープンイノベーションという流れは自然なものです。今後もビジネスは多様化複雑化してオープンイノベーションの流れは進んでいくでしょう。”

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